『タイタニック』『バニラ・スカイ』『モネと時間旅行』…没後100年のいま、クロード・モネに映画でふれる

コラム

『タイタニック』『バニラ・スカイ』『モネと時間旅行』…没後100年のいま、クロード・モネに映画でふれる

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光や大気の移ろいを筆致に写し取った“印象派”を代表するフランスの画家クロード・モネ。同じ被写体を時間帯や季節を変えて何枚も描き続けた「積みわら」「ルーアン大聖堂」などの連作や、晩年を過ごしたジヴェルニーの庭を描いた「睡蓮」の大作群で知られ、その画業はいまなお絵画史に大きな影響を与え続けている。

オランジュリー美術館には「睡蓮」の連作8枚が展示されている
オランジュリー美術館には「睡蓮」の連作8枚が展示されている[c] STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques

2026年は、そんなモネの没後100年にあたる。東京・京橋のアーティゾン美術館で実施された企画展「クロード・モネ-風景への問いかけ」には41万人以上が来場し、同館の来館者記録を更新。モネにまつわる展示は各地で開催されている。

そしてメモリアルイヤーの気運を追い風に、映画『モネと時間旅行』が9月18日より公開中。モネの作品はこれまでも数々の映画に密かに、あるいは大胆に登場してきた。ここでは、モネの絵画そのものが物語のカギを握る映画から、さりげない背景の一枚として登場する映画までを紹介していきたい。

贋作をめぐるだまし合い『モネ・ゲーム』

まずは、そのものズバリのモネの名がタイトルに入った、コリン・ファース&キャメロン・ディアス共演のクライムコメディ『モネ・ゲーム』(12)。横暴な雇い主への意趣返しとして、美術鑑定士ハリー(ファース)はモネの贋作詐欺を計画する。モネによる連作の代表作「積みわら」のうち、行方不明になっている一枚の贋作を用意し、億万長者のコレクターである雇い主に売りつけようとする。だが、相棒に選んだテキサスのカウガール、PJ(ディアス)の天然っぷりによって、計画は思わぬ方向へ転がっていく。

同じ被写体を描くがゆえに「どれが本物か」を曖昧にしてしまう連作という性質を逆手に取った、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟による脚本の妙。モネ作品の“本物らしさ”がどこに宿るのかという、いかにも印象派らしいテーマを軽やかなコメディに落とし込んでいる。

映画のタイトルの由来となった『バニラ・スカイ』

スペイン映画『オープン・ユア・アイズ』(97)のリメイクにあたる『バニラ・スカイ』(01)。交通事故で顔に傷を負ったデヴィッド(トム・クルーズ)は、夢か現実か判然としない世界に迷い込んでいく。意識と現実の境界が揺らいでいく物語のなかで、出版王一族の御曹司であるデヴィッドの部屋に飾られ存在感を放つのが「アルジャントゥイユのセーヌ川」だ。

トム・クルーズ主演の異色サスペンス『バニラ・スカイ』
トム・クルーズ主演の異色サスペンス『バニラ・スカイ』『バニラ・スカイ』 4K Ultra HD+ブルーレイ:6,589円(税込) Blu-ray:2,075 円(税込)/DVD:1,572 円(税込) 発売・販売元: 株式会社ハピネット・メディアマーケティング [c] 2001, 2023 Paramount Pictures. ※記事公開時の情報です。

実は映画のタイトル『バニラ・スカイ』は、この絵に由来している。パーティーで出会ったソフィア(ペネロペ・クルス)にこの絵を見せたデヴィッドが、キャンバスに広がる空を「バニラ色の空」と表現しており、そのひと言が作品全体を象徴する言葉として終盤まで効いてくる仕掛けだ。絵そのものはデヴィッドの母親にまつわる思い出の品で、彼が絵を見つめるシーンは、自分の人生を見つめ直す瞬間とも重なる。水面の反射や光の移ろいを描くモネの筆致が、主人公の不安定な知覚世界と響き合っている。

名画強奪劇のターゲットに『トーマス・クラウン・アフェアー』

トーマス・クラウン・アフェアー』(99)で大富豪の主人公が退屈しのぎに企てるのが、ニューヨーク・メトロポリタン美術館からの名画強奪。その標的に選ばれるのが、モネの「黄昏、ヴェネツィア」だ。スティーブ・マックイーンが主演した1968年の『華麗なる賭け』のリメイクにあたる本作では、盗難事件を追う保険調査員との駆け引きが、いつしか恋の駆け引きへとすり替わっていく。

ピアース・ブロスナンとレネ・ルッソが火花を散らすロマンティック・サスペンスのなかで、モネの絵は知的で優雅な“いたずら”を成立させる格好の獲物として物語を牽引する。莫大な富を持つ主人公にとって絵画そのものの金銭的価値は問題ではなく、完璧な計画を実行するスリルこそが目的という設定も、名画の“所有”と“鑑賞”の意味を考えさせる仕掛けになっている。


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