中野量太監督「最後まで考え抜くことができた」早瀬憩「本当に貴重な経験」『私はあなたを知らない、』で向き合った“家族”と“赦し”

中野量太監督「最後まで考え抜くことができた」早瀬憩「本当に貴重な経験」『私はあなたを知らない、』で向き合った“家族”と“赦し”

『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)の中野量太監督が、10年ぶりに完全オリジナル脚本で挑むヒューマンサスペンス『私はあなたを知らない、』(公開中)。そこに描かれるのは、決して交わることのなかったはずの2人が13年という長い時間を経て向き合う、魂の対話だ。母を殺した青年と対峙する娘を演じるのは、早瀬憩。複雑に揺れ動く感情を抱えた難役に挑み、スクリーンに鮮烈な存在感を刻んでいる。“家族”とは、そして“赦し”とはなにか。答えの出せない問いを突きつける本作だからこそ、撮影現場ではキャスト、スタッフが一つひとつの感情に向き合い、考え、語り合う時間を重ねていたという。中野監督と早瀬が振り返る、かけがえのない創作の時間。その先に見えたものとは。

「いままでにない作品にチャレンジしたかった」(中野監督)

『私はあなたを知らない、』は、“母を殺した男”と“被害者の娘”という、本来交わるはずのない2人の運命を映し出すヒューマンサスペンス
『私はあなたを知らない、』は、“母を殺した男”と“被害者の娘”という、本来交わるはずのない2人の運命を映し出すヒューマンサスペンス[c]IDKYPs./Pyramide Productions

本作は、日仏共同製作のヒューマンサスペンス。天涯孤独の身である西山夕平は、たった一人の環境を寂しいとも感じずに生きてきた。職場にやってきた新しいパート職員・紗月と出会い、彼の毎日が輝きだす。シングルマザーだった紗月、彼女の娘である朝子との生活で、これまで知らなかった“家族”という幸せの形に触れ、心を解放していく夕平。しかしある日、悲劇が起きる。それから13年後。唯一の身寄りだった祖母を亡くし、天涯孤独となった朝子は、母が殺された事件の真相を確かめるために刑務所に収監されている夕平のもとを訪ねる。

――本作は、中野監督にとって10年ぶりの完全オリジナル作品となります。どのような作品に挑みたいという想いがありましたか。

「みんなと一緒に作っていく感覚が、とてもおもしろかったです」と充実感を口にした中野量太監督
「みんなと一緒に作っていく感覚が、とてもおもしろかったです」と充実感を口にした中野量太監督撮影/三角茉由

中野「いままでにない作品にチャレンジしたいと思っていました。僕がこれまでやったことがない“人を殺める”という行為を描き、さらに“赦しとはなんだ”という難しいテーマにも挑んでいます。脚本を書いている段階から、これは大変だぞと頭を悩ませていました。そこで8割は自分のなかでわかっているけれど、あとの2割は撮影現場の皆さんと一緒に作っていくしかないなと。オリジナルだからこそ、最後に出す答えを変えることもできる。一緒に作品に取り組み、一緒に考え、変えていってくれるような人と取り組みたいと思っていました。現場ではいつも以上に、皆さんとたくさんお話した気がします」

早瀬「みんなで考察したりしていましたね」

中野「スタッフのみんなも“夕平を赦すことができるか、赦せないか”と話し合ったり。そうやって一緒に作っていく感覚が、とてもおもしろかったです」

「常に監督がそばにいてくださった」と信頼感を吐露した早瀬憩
「常に監督がそばにいてくださった」と信頼感を吐露した早瀬憩撮影/三角茉由

早瀬「私も、監督や皆さんと一緒に作っていったという感覚が強いです。脚本を読んだ時には、家族や愛の形について自分自身も考えさせられると同時に、とても複雑で深いお話だと思いました。何度も脚本を読んで、わからないところは監督に相談しながら、物語の世界に入っていきました。朝子はとても難しい役なので、苦戦することも多かったんです。でもそんな時にも、常に監督がそばにいてくださった。何度も励ましてくれましたし、奮い立たせてくれました。監督と信頼関係を築けたと思えたことが、とてもうれしかったです」

――中野監督は、早瀬さんをどのように奮い立たせたのでしょうか。


中野「お菓子をそっとあげたり…。それは冗談ですが(笑)、早瀬さんは朝子という役柄をきちんと捉えていたので、『ちゃんとできるよ』『あともう少し』『間違っていないから大丈夫』とお伝えしていました」

早瀬「撮影現場は中野監督の優しい人柄が伝染しているようで、ずっと穏やかな雰囲気がありました。とても愛情深く、懐の深い方で、本作もそういった監督だからこそ作れた映画、監督にしか作れない映画だと感じています」

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