日本版声優・榎木淳弥が語る、スパイダーマンと歩んだ10年間。最新作は「“静かな熱さ”、という感じ」
「悲しいシーンもあります。でも、前向きな気持ちになれる作品」
“親愛なる隣人”としても知られるスパイダーマン/ピーター・パーカーは、マーベルの数多くのヒーローのなかでも、最も人気のあるキャラクターの一人であろう。とりわけ日本では、スパイダーマンを主人公にした21世紀以降の作品のいずれも、飛びぬけたヒットを記録していることがそれを証明している。そんな人気の理由を、演じる側としてどう受け止めているか尋ねると、「完璧じゃないところ」だと榎木は真っすぐな眼で答える。「ピーターは間違えたり、負けたりするし、戦うことへの悩みも抱えている。そういう部分が、いまこの世界で生きている僕らと重なると思うんです。スーパーヒーローではあるけれど、遠くない存在と思わせてくれますから」。“親愛なる隣人”とは、まさにそんなキャラクターを差す言葉なのだ。
共感を抱けるキャラに演者がなり切る以上、ピーターと感情がシンクロする場面もあるに違いない。そこで、これまでもっともピーターに感情が重なった場面について問うと、MCU単独シリーズ1作目の『スパイダーマン:ホームカミング』(17)を挙げた。「クライマックス後、スパイダーマンとしては未熟なピーターが瓦礫の中から立ち上がる場面です。諦めてしまいそうなところから、自分を励まして立ちあがる。演じていても胸が熱くなるシーンでした」。
ならば最新作『ブランド・ニュー・デイ』では、そんな場面はあったのだろうか?「あのころに比べるとピーターも大人になっていますから、“静かな熱さ”、という感じです。成長したぶん、自分だけではなく周りにも目がいく。人を助けたり、人を励ましたりする時の優しさというか、そういう部分が熱くなるところでした」と、榎木は振り返る。いつまでも子どものままではいられない。大いなる力には大いなる責任が伴う――本作はそれを自覚したピーターの物語でもあるのだ。
「『ブランド・ニュー・デイ』の脚本を読んで最初に思ったのは、すごくいい脚本だということでした。人間ドラマが、とてもよくできていたんです」と、榎木は語る。最後にそれを踏まえて、映画を楽しみにしている観客へのメッセージをお願いした。「前作の結末を観て、“この先どうなるんだろう?”と思われた方も多いと思います。『ブランド・ニュー・デイ』では、その先が丁寧に描かれています。悲しいシーンもあります。でも、前向きな気持ちになれる作品なので、ぜひ劇場で観てほしいですね」。
言うまでもなく、「スパイダーマン」シリーズである以上、スピーディで躍動的なアクションのすごみも存分に含まれているはず。愛すべきピーターのその後を、ハラハラしながら見守ってほしい。
取材・文/相馬学
