初期作『ミイラ再生』、イメージを一新した「ハムナプトラ」、ホラーへの回帰作『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』などなど!ミイラ映画の歴史と意義を掘り起こす

コラム

初期作『ミイラ再生』、イメージを一新した「ハムナプトラ」、ホラーへの回帰作『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』などなど!ミイラ映画の歴史と意義を掘り起こす

映画に登場する怪奇モンスターのなかでも、ミイラほど劇的な変遷を遂げてきた存在は珍しい。吸血鬼や狼男が民間伝承にルーツを持つのに対し、ミイラは古代史に加え、西洋によるエジプトなど古代文明の収集という植民地主義的関心、さらにハリウッドの想像力が交錯して生まれた長い歴史を背負うキャラクターだ。『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』が劇場公開されたことにより、我々はこの包帯に包まれた存在と再び向き合うことになる。その意義を理解するには、サイレント期から現代の再解釈に至るまで、ミイラ映画の歴史を掘り起こす必要があるだろう。

ジェームズ・ワン製作×ブラムハウスの布陣で製作された『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』)
ジェームズ・ワン製作×ブラムハウスの布陣で製作された『THE MUMMY / ザ・マミー 棺の中の少女』)[c]2026 Warner Bros. Ent. All rights reserved

ミイラ映画、その起源

ミイラ映画の起源は、およそ20世紀初頭にまでさかのぼる。無声映画時代には『The Mummy(原題)』や1917年の『Cleopatra(原題)』といった、古代エジプトを題材にした作品がすでに制作されていた。しかし、これらはロマンスや歴史スペクタクルの色合いが濃く、後年に定着する“怪物”としてのミイラ像とは、やや異なるものだった。

そうしたエジプト幻想を決定的に大衆化させたのが、1922年に考古学者ハワード・カーターによって成し遂げられた、ツタンカーメン王の墓の発見である。この出来事は世界的なセンセーションを巻き起こし、“ミイラ=呪い”という神秘的イメージを広く浸透させた。それと同時に、映画におけるホラーの題材としての可能性を一気に押し広げたのだ。こうした諸要素が、のちの本格的なミイラ映画へと結実していくことになる。

ユニバーサル時代におけるモンスターの誕生

ミイラが本格的に“モンスター映画”として創造されたのは、1932年のユニバーサル映画『ミイラ再生』である。これは『フランケンシュタイン』(31)や『魔人ドラキュラ』(31)の成功を受け、新たな怪物映画として企画された作品だ。ボリス・カーロフ演じるイムホテップは、王女への禁断の愛ゆえに生きたままミイラにされるという、悲劇的な背景を持つ。彼は数世紀を隔てて蘇り、愛する者を取り戻そうとする存在として描かれた。

『フランケンシュタイン』でもおなじみのボリス・カーロフがミイラを演じる『ミイラ再生』
『フランケンシュタイン』でもおなじみのボリス・カーロフがミイラを演じる『ミイラ再生』[c]Everett Collection/AFLO

この愛と呪いの融合は、単なる怪物とは異なるミイラ像を生みだした。ジャック・ピアースによる特殊メイクも特記すべき要素であり、コットンや粘土、ゴム糊を用いてカーロフの体を包帯で覆う作業は過酷を極め、本人が「役者人生で最もつらい仕事だった」と語るほど。

生きたままミイラにされるイムホテップ(『ミイラ再生』)
生きたままミイラにされるイムホテップ(『ミイラ再生』)[c]Everett Collection/AFLO

このビジュアルこそが後世のミイラ像の決定的なスタイルとなるのだが、『ミイラ再生』に続く2作目の『ミイラの復活』(40)以降は方向性が変化し、ミイラは「カーリス」という名の脱個性的な存在となり、ただ足を引きずって歩く怪物へと短略化されていった。演じる俳優もトム・タイラーやロン・チェイニー・Jr.(『ミイラの墓場』)へと引き継がれ、キャラクターは希釈されて汎用型になっていく。

トム・タイラーがミイラことカーリスを演じた『ミイラの復活』
トム・タイラーがミイラことカーリスを演じた『ミイラの復活』[c]Everett Collection/AFLO

世界的な広がりとハマーによる再解釈

1950年代後半になると、ミイラ映画は新たな広がりを見せる。イギリスではハマー・フィルムがユニバーサル作品の権利をもとに『ミイラの幽霊』(59)を制作し、クリストファー・リーがミイラを怪演した。カラー映像と暴力表現を強化したこの作品は、より直接的で迫力ある恐怖を打ちだしている。

カラー映像と暴力表現を強化した(『ミイラの幽霊』)
カラー映像と暴力表現を強化した(『ミイラの幽霊』)[c]Everett Collection/AFLO

また同じ頃、メキシコではアステカ文明を題材とした独自のミイラ映画『La momia Azteca(原題)』(57)を起点とするシリーズが制作されるなど、ミイラはエジプトという枠を離れ、多様な文化へと波及していく。この国際的な広がりは、ミイラという存在の柔軟性を示す好例といえるだろう。


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