「ホラーじゃないのにどんなホラーよりも怖い…」「自分ならどうする?」賛否両論の問題作『廃用身』、その“衝撃の正体”を、鑑賞直後の観客たちの生の声からひも解く
現役医師で小説家の久坂部羊のデビュー作にして、そのあまりにも強烈な設定から“映像化不可能”とまで言われたヒューマンサスペンスを、染谷将太主演で実写映画化した『廃用身』が5月15日(金)より公開される。それに先駆けて開催されたMOVIE WALKER PRESS試写会で鑑賞直後の観客約100名にアンケートを実施したところ、「いまの気持ちに一番フィットするのは?」との質問に対し、「リアルに考えさせられた」が一番多く選ばれ、「善悪、是非の境界線が崩れた」、「衝撃すぎて言葉を失った」などと衝撃を受けた観客が続出。
そこで本稿では、観客たちの鑑賞直後の生の声を賛否両論どちらもピックアップ。正解のない問いを突きつけ、多種多様な捉え方ができる本作の“衝撃”の正体をひも解いていこう。
鑑賞後に議論したくなる?不要な手足”を切断する“Aケア”の是非をめぐって様々な意見が噴出
タイトルにある“廃用身”とは作中の造語で、麻痺などによって回復の見込みがない手足のこと。ある町のデイケア「異人坂クリニック」に通うお年寄りのあいだで密かに広まっているのは、院長の漆原(染谷将太)が考案した画期的な治療法“Aケア”。従来の常識を覆す“身体のリストラ”を選択した患者たちには、予想外の好ましい副作用が現れる結果に。その噂を聞きつけた編集者の矢倉(北村有起哉)は、漆原に本の出版を持ちかける。しかしその矢先、患者宅でとある事件が起き、すべてが暗転していくことになる。
「あまりにもリアルで現実に起こりそうなエピソードばかり。本当にこんなことがどこかで起こっているかもと思わせる迫力がありました」(60代・女性)というコメントからもわかる通り、本作の最大の特徴は、映画のなかの話だと割り切って観るのが難しいほど生々しく“現実”を突きつけてくる点。作中で描かれる高齢者の“不要な手足”を切断する「Aケア」の是非をめぐって、「リアルに考えさせられた」と回答する観客が多く見受けられた。
「メリットよりその後のデメリットの方が大きいという現実と、介護問題への解決の糸口と思われたものがより強い混沌を生み出してしまう」(20代・男性)
「不要な部分を切断するといって幸福になるとは限らないし、境界線の危うさがリアルだった」(30代・男性)
「ホラーじゃないのにどんなホラー映画よりも怖かったです」(30代・男性)
「倫理観を揺さぶられるような設定のリアリティに引き込まれる」(50代・男性)
麻痺によって動かせることができなくなった“廃用身”を切断するという“Aケア”。本作の根幹ともいえるこの“画期的な治療法”についても「映画でもあったように同調圧力で切断してしまう人が出てきそう」(20代・男性)や「人としての道徳に反する」(50代・女性)などの慎重な意見が飛びだすなど、観客のあいだで議論が巻き起こっていた。
“Aケア”に「賛成」だと回答した観客でも「当事者がはっきりとAケアの良い面、悪い面を理解した上でなら良いのでは…」(20代・男性)や「合理的である。ただ、心のケアも必要だと思う」(30代・男性)と、条件付きで賛成する観客がほとんど。全体の半数を占める観客が、その是非に関して「わからない」と回答している。
「あくまでも当人らの判断であるべきで、賛否両面あるべきことだと思う」(30代・男性)
「良い面も苦しい面も両方含まれていると思うので、当事者と家族で受け取り方も違うと感じる」(30代・男性)
「合理的ではあるが、感情が追いつかない」(30代・女性)
「気軽に賛成とか反対とか言えないなと思ったので、原作を読んで今一度向き合いたいです」(30代・女性)
と、様々な意見が飛び交うなかには、 「身内の四肢がなくなることに忌避感がある。ただ、ケアする側になったらわからない」(30代・男性)や、「合理的でいいと思いますが、いざ自分のこととなると迷うと思います」(40代・男性)、 「介護の経験はないのでわからないけど、自分が当事者で苦しんでいたら選択する可能性もあると思った」(30代・女性)など、自分ごととして見つめ直すと意見が変わるかもしれないという声も見受けられた。
