『花緑青が明ける日に』で長編デビュー。四宮義俊監督に問う、AI時代に“あえて手描きでやる意味”

『花緑青が明ける日に』で長編デビュー。四宮義俊監督に問う、AI時代に“あえて手描きでやる意味”

「失われていく瞬間は、一番輝いて見えるもの」

再開発による立ち退きの期限が迫るなか、幼馴染3人が過去と向き合い、未来を見つめていく
再開発による立ち退きの期限が迫るなか、幼馴染3人が過去と向き合い、未来を見つめていく[c]2025 A NEW DAWN Film Partners

本作で四宮監督は、原作、脚本、監督を担っている。主な登場人物である敬太郎、カオル、チッチは、思い出の詰まった古びた花火工場に集い、過去と向き合い、決着をつけるかのように、それぞれの胸に秘めた本音をぶつけ合っていく。物語を作り上げるにあたって、「40代に突入し、人生において振り返るものが出てくると、整理したくなるものがたくさんあるなと思いました。家の問題、親の問題や家業のこと、子どものことなど、自分なりに整理をつけたいものが、モチーフになりました」と彼らの姿に自身の投影があることも告白する。

そのなかで色濃く浮き彫りとなるのは、“失われていくもの”への想いだ。映画のタイトルにある「花緑青」という花火の材料に使われる顔料も、その美しさと引き換えに毒性を含むため、現在ではほとんど使用されなくなったもの。劇中では、埋め立てられた海、立ち退きを迫られる花火工場、敬太郎たちが育った家など、数々の“失われていくもの”に目が向けられている。

登場人物たちには監督自身も投影されている
登場人物たちには監督自身も投影されている[c]2025 A NEW DAWN Film Partners

四宮監督は、「劇中ではガソリンスタンドが2回ほど出てきますが、もうその(モデルとなった)ガソリンスタンドもありません。ガソリン車さえもなくなっていくかもしれません。失われていく風景、なくなっていくものには意味があって、環境的な問題で許されないから淘汰されていく、必要とされなくなっていくものもあります。敬太郎たちの住んでいた昭和レトロな家もなくなるし、当然そのなかの家具もなくなる。すべては積み重ねて、積み重ねて、なくしていくもの」と考えを提示。加えて、「花火もそうですが、なくなっていく瞬間、失われていく瞬間というのが、一番輝いて見えるものだと感じる」と見解を述べる。

まさに本作の主軸となっている花火は、夜空に大輪の花を咲かせ、一瞬にして消えていく儚さも含めて人々を惹きつける。劇中では、クライマックスに打ち上がる花火が、目を見張るような美しさで描かれている。観客に忘れがたい印象を残す、花火のシーンに込めた想いとは?

【写真を見る】忘れられないラスト10分。打ち上がる花火の美しさに心を掴まれる!
【写真を見る】忘れられないラスト10分。打ち上がる花火の美しさに心を掴まれる![c]2025 A NEW DAWN Film Partners


「花緑青というのは銅の化合物なんですが、いまでは花緑青を使った花火を実際に見ることはできません。そのなかで、映像として見たことのない花火を表現したいという課題もありました。花火のシーンは、特殊映像担当としてSUKIMAKI ANIMATIONの鋤柄真希子さんに入っていただいて。アナログのカメラで撮影したものをいろんなところで使っています。ほかにも一昨年、広島で開催のひろしまアニメーションシーズンでワークショップを行い、そこに参加した30人ほどの方々にも黒い紙に針で穴を開けていただくなど、素材作りのお手伝いもしていただきました。花火というのはイベントごとでもあるので、映画づくりにおいてもイベント感があるといいなと思っていたんです」と多様な人々が参加しつつ、アナログの手法を用いて完成したシーンとなった。クライマックスで「幸せな瞬間と、それがなくなる瞬間。その対比を大事にしたいと思っていました」と明かす。

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