恋人と“人生を共有する”ことはどこまで行くのか?共依存ボディホラー『トゥギャザー』マイケル・シャンクス監督インタビュー
「この映画は、僕の作品であると同時に、彼女(パートナー)の作品でもある」
――恋愛映画としても、すごく完成度が高いと思いました。特に心情を如実にする音楽の使い方が印象的です。スパイス・ガールズのエピソードもそうですし、全体的に90年代の少し陰りのあるロック――ニルヴァーナやレディオヘッド的な空気も感じました。監督ご自身の音楽的なバックグラウンドについて教えてください。
「その質問、大好きです(笑)。今回の作品は、実は初めて自分で音楽を作曲、演奏しなかった映画なんです。それまでの短編では、全部自分でやっていたんですけど。でもティムがミュージシャンなのは、完全に僕自身がモデルです。劇中に出てくるギターも僕のですし、弾いているリフも、昔アルバム用に書いた未発表曲だったりします。
好きだった音楽でいうと、最初に兄が買ってくれたのがブラーのアルバムでした。 レディオヘッドもそうですし、ポーティスヘッドにマッシヴ・アタック。2000年代のアメリカン・インディーだとグリズリー・ベア。日本のバンドだとMelt-BananaやYMOもよく聴いていました。あとはフィリップ・グラスみたいなコンテンポラリー・クラシカルも。僕自身、成功しきれなかったインディーロック志望者だったと思ってます(笑)。だから、音楽の夢を追うティムと、映画の夢を追う自分を重ねているんですよね。ミリーが『彼はリスクを取りすぎるから、私は取れない』と言いますよね。あれ、めちゃくちゃ身に覚えがあります(笑)。夢追い人はいつもパートナーと相容れないものです」
――制作を後押ししてくれたパートナーの方は、この映画を観てどんな反応でしたか?監督のこれまでの人生そのものを観る体験だったと思うんですが。
「彼女、すごく気に入ってくれています。脚本を最初に読んだのも彼女ですし、最初のダメ出しも彼女でした。プレミア上映では、ずっと手をつないで観てました。お互い、緊張しすぎて(笑)。この映画は、僕の作品であると同時に、彼女の作品でもあります。アーティストと一緒に生きるって、成功も失敗も、全部一緒に背負うことだから。17歳で初めて映像の仕事をして、そこから17年。初長編がこうして世に出て、しかもちゃんと受け入れられた。人生が変わりました。ちなみに、サンダンス(映画祭)の頃、うちの冷蔵庫が壊れてたんですよ。それを何気なくNEONの人に話したら、オーストラリアに帰ったら、新しい冷蔵庫が届いてて(笑)。映画が人生を変えた、っていうのは、そういう意味でも本当ですね」
――本当にすばらしい話です。作品としても、観客としても、インタビュアーとしても、心からうれしい映画でした。今後の活躍を楽しみにしています。
「ありがとう!もし会うことができたら、音楽の話をしましょう」
『トゥギャザー』は、ボディホラーの皮をかぶった恋愛映画であり、恋愛映画の顔をしたホラーでもある。そこにあるのは怪異ではなく、誰かと生きることの重さだ。人生を共有するということは、喜びだけでなく、恐怖や不安、失敗までも引き受けるということ。その覚悟がなければ、真のインティマシーには辿り着けない。身体が結合するという極端なイメージは、その比喩にすぎない。本当に問われているのは、「ここまで相手と一緒になれるのか?」という、ごくありふれた、しかし誰にとっても切実な問いなのだ。
だから本作は怖い。だが同時に、どうしようもなく切実で、どこか愛おしい。観終わったあとに残る違和感こそが、『トゥギャザー』という映画が、ホラーでも恋愛映画でもなく、“関係の映画”であることの証明なのだろう。
取材・文/氏家譲寿(ナマニク)

