恋人と“人生を共有する”ことはどこまで行くのか?共依存ボディホラー『トゥギャザー』マイケル・シャンクス監督インタビュー
倦怠期のカップルの身体が文字通り“くっついてしまう”という、衝撃的なボディ・ホラー『トゥギャザー』が2月6日より公開中だ。サンダンス映画祭でのワールドプレミア上映で反響を呼び、NEONが争奪戦の末に米国配給権を獲得したという本作のメガホンをとったのは、本作で長編デビューを果たしたオーストラリア出身の新人マイケル・シャンクス。PRESS HORRORではシャンクス監督にインタビューを敢行し、作品に込められた意図について迫った。
「究極のインティマシーって、突き詰めると“融合”だと思う」
『トゥギャザー』を観たとき、果たしてこれはホラーなのか?と思った。身体が生々しく結合しているポスターを見ると、おぞましさを感じる。しかし、本作を理解しようとしたとき、融合は恐ろしいことでなく、悩みや葛藤、いさかいの果てにたどり着く究極の相互理解の形であり、ひいては悦ぶべき状態とも考えられるのだ。
というのは、本作の主人公であるティムとミリーの2人は非常に難しい状況にある。奇怪な現状に巻き込まれ身体は“物理的に”引かれ合うも、恋人同士としては“精神的に”乖離している。つまり、破局直前なのに何故か身体がくっついてしまう。そんななか、なんとか状況を打開しようとして協力していくうちにお互いの本当の気持ちが明らかになっていくのだ。
もう一度、考えてみる。これはホラーなのか?たしかに状況はホラーだろう。しかし、なんだろう、この違和感は。もう監督に聞くしかあるまい…。
――監督はこの映画について、長年のパートナーとの16〜17年に及ぶ関係がベースにあると、これまでのインタビューでも話されていますね。そのなかで、「これは映画になるかもしれない」と思った決定的な瞬間って、いつだったんでしょう?
「たぶん、一緒に暮らし始めたときですね。『あ、これはもう“同じ人生を生きてる”ってことなんだな』って、急に実感したんです。友達関係も共有して、家も共有して、呼吸してる空気まで同じで…。彼女が吸っている空気を、僕も吸っている。その事実を意識した瞬間、ちょっとパニックになって。それでふと、『ここまで共有してるなら、肉体や血まで共有したらどうなるんだろう?』って考えたんです」
――これは映画になるかもしれない、と?
「いや、最初は正直『バカなアイデアだな』って思いました。自分で映画にする自信もなかった。でもある日、同じオーストラリア人の映画作家でアニメーターのマイケル・キューザックとパブで飲んでいて、昔のアイデアの話になったんです。『カップルのボディホラーを考えたことがある』って言ったら、彼が即座に『それ、めちゃくちゃいいじゃん。やるべきだよ』 と言ってくれたんです。その一言で、「あ、ちゃんと向き合っていいアイデアなのかも」って思えました。 たった一人からの肯定なんですけど、それが大きかったですね。家に帰ってパートナーに話したら、『正直、あなたがそれを書くのはちょっと怖い。でも、いいアイデアだから書くべきだと思う』 と後押ししてくれて。その“許可”をもらえた感じで、一気に書き上げました。 脚本自体は本当に早かったです。ただ、そこから実際に映画になるまでは…何年もかかりましたけどね(笑)」
――いま「ボディホラー」という言葉が出ましたが、一般的なボディホラーって、身体が異形に変わる“恐怖”が中心ですよね。でも『トゥギャザー』の場合、どこかエロティックで、親密さの延長線上にあるようにも感じました。監督にとって、この“身体の融合”は恐怖なんでしょうか?それとも快楽に近いものなんでしょうか?
「いい質問ですね。究極のインティマシーって、突き詰めると“融合”だと思うんです。 誰かに近づきたい、完全に一緒になりたい、という欲望の行き着く先。だからこれは、恐怖か快楽か、どちらか一方ではなくて、その両方が同時に存在している状態を描いているつもりです」
――別のインタビューで、アンジェイ・ズラフスキー監督の『ポゼッション』(81)や三池崇史監督作品の名前が挙がっていましたよね。たしかに本作は“怖い”だけじゃなくて、究極の状態にどこかおかしみもある。このユーモアは意図的に入れたものなんでしょうか?
「最初は、人生で一番シリアスなホラーを作るつもりだったんです。本当だよ!でも状況があまりにも極端で、どうしても笑えてしまう。だったらもう、そこに抵抗するのはやめよう、と。結果的に、コメディ要素を受け入れたことで、作品は確実によくなりました。観客の反応もすごくおもしろくて、オーストラリア、メキシコ、スペイン、カナダ、アメリカ…英語圏じゃない国でも、ちゃんと笑いが起きるんです。『あ、これは間違ってなかったな』って、そこで確信しました」

