ロブ・ライナー監督が遺した名作を、自身の言葉で振り返る貴重なインタビュー「『スタンド・バイ・ミー』は初めて自分の個性を反映した映画」

ロブ・ライナー監督が遺した名作を、自身の言葉で振り返る貴重なインタビュー「『スタンド・バイ・ミー』は初めて自分の個性を反映した映画」

トム・クルーズやメグ・ライアン…ライナー監督の世界観を作り出す役者たち

2022年のカンヌ国際映画祭において、トム・クルーズが名誉パルム・ドールを受賞し同時期にカンヌを訪れていた。ライナー監督は、当時30歳のクルーズを『ア・フュー・グッドメン』で起用している。
「トムはもうすぐ60歳になりますが、彼はキャリアを賢く管理しています。本当にすばらしい作品に出演し続け、いまは『ミッション:インポッシブル』シリーズや『トップガン』の続編を抱えています。それでも、私はトム・クルーズにほかのことをやってほしいですね。フランチャイズの興行はうまくいっているし、トムはすばらしくやってのけている。でも、世間は彼を過小評価しています。彼は類稀なる才能を持つ俳優なのだから、ほかのタイプの作品にも挑戦してほしいのです」

【写真を見る】米海軍基地で起きた殺人事件の真相を探るため、若き弁護士が権力に立ち向かうさまを描く『ア・フュー・グッドメン』
【写真を見る】米海軍基地で起きた殺人事件の真相を探るため、若き弁護士が権力に立ち向かうさまを描く『ア・フュー・グッドメン』[c]Columbiacourtesy Everett Collection

ロブ・ライナー作品のなかでももっとも有名な、メグ・ライアンが『恋人たちの予感』で演じたシーンについてはこう語っていた。
「メグの演技のあと、『彼女と同じものを』と言っているのは、私の母のエステル・ライナーです。あのシーンを撮影する時、母に言いました。『かなりおもしろいシーンになると思うよ。メグ・ライアンが公共の場でフェイク・オーガズムを演じるのだから』と。最後に決めセリフがあって、おもしろいはずだけど、もしもうまくいかなかったらカットしなければならなくなるかも、と母に告げました。母は『大丈夫、気にしないわ。息子と一緒にいて、ホットドッグを食べて、楽しければいいわ』と言いました。そしてそれがもっともおもしろいセリフになりました。一番うれしいのは、その『彼女と同じものを』とオーダーするセリフが、史上最高の映画のセリフにランクインしていることです。クラーク・ゲーブルの『正直言って、俺には関係ない』(『風と共に去りぬ』)や、ハンフリー・ボガートの『ルイ、これが友情の始まりだな』(『カサブランカ』)に、エステル・ライナーのセリフが並んでいるのですから」

『恋人たちの予感』にはライナー監督の実母であるエステル・ライナーが出演し、名セリフを残した
『恋人たちの予感』にはライナー監督の実母であるエステル・ライナーが出演し、名セリフを残した[c]Columbiacourtesy-Everett-Collection

感動は時を超えて観客の心に残り続ける

たくさんの名作を遺したライナー監督は、自身の作品でもっとも気に入っているのは『スタンド・バイ・ミー』だと答えていた。
「なぜなら、初めて自分の個性を本当に反映した映画を作ったと感じていたからです。憂鬱さがあり、感情が現れ、ユーモアもある。音楽も私の青春時代のものを使っています。だから、『スタンド・バイ・ミー』は私の作風と合った、とても意味のある映画と言えるでしょう。最初の映画『スパイナル・タップ』は風刺のつもりでした。私の父(カール・ライナー)は若い頃、テレビ番組で風刺劇をやっていました。その影響を受けたものです。2作目は『シュア・シング』で、若者向けのロマンティック・コメディでした。父もいくつかロマンティック・コメディを監督していて、これは初めて父が考えもしなかったことをやった、私をより反映している作品といえます。もしも観客がこれを気に入ってくれたら、少なくとも私がやりたい種類の映画を作っていけるだろうと思いました。それはコメディとドラマを融合させた作品でした」

このインタビューで答えているように、まさにロブ・ライナー監督は独自の映画ジャンルを切り開いてきた。風刺を込めたモキュメンタリー、ホラー小説を成長ドラマとして描いた映画、男女の友情と恋愛を描いたラブコメ。そして、それらの作品に出会った時の感動は、時を超えて観客の心にも残り続ける。アメリカ映画の名匠のご冥福をお祈りいたします。


取材・文/平井伊都子

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