A24製作『エディントンへようこそ』撮影監督、ダリウス・コンジにインタビュー。名だたる巨匠と組んできたベテランらしからぬ信条とは?

A24製作『エディントンへようこそ』撮影監督、ダリウス・コンジにインタビュー。名だたる巨匠と組んできたベテランらしからぬ信条とは?

ホアキン・フェニックスを主演に迎えたアリ・アスター監督の最新作『エディントンへようこそ』(公開中)。A24製作・配給による本作は、コロナ禍で揺れるニューメキシコ州の小さな町エディントンを舞台に、保安官と野心家の市長がSNSとリアルで激突する異色スリラーだ。強烈な日に照らされた乾いた大地で激突する男たちを描いた本作の撮影を手掛けたのが、デヴィッド・フィンチャーやロマン・ポランスキー、ウォン・カーウァイ、ポン・ジュノほか、名だたる巨匠の作品で活躍してきたダリウス・コンジ。『バルド、偽りの記録と一握りの真実』(22)でのアカデミー撮影賞ノミネートでも話題になった鬼才に話を聞いた。

「アリ・アスター監督は、映画界に新風を吹き込む存在になると感じました」

コロナ禍で町がロックダウンになったエディントン。町中が不満を抱えながら隔離生活を送るなか、保安官のジョー(フェニックス)は、マスク着用をめぐり市長テッド(ペドロ・パスカル)と対立したのを機に市長選挙に立候補を表明する。同じ頃、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)はカルト集団に心を奪われ家出。陰謀論が横行し、人種差別運動が激しさを増していくなかで、ある殺人事件が発生する…。

保安官のジョーは、市長のテッドにアンチマスクを訴えるが...
保安官のジョーは、市長のテッドにアンチマスクを訴えるが...[C] 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

本作はコンジにとって初のアスター監督作。彼がアスター監督の才能に驚かされたのは『ミッドサマー』(19)を観た時だった。「緊張感あるユニークで新鮮な作品でした。この監督はなにか特別な才能の持ち主で、映画界に新風を吹き込む存在になると感じました」。その後『ヘレディタリー/継承』(18)、『ボーはおそれている』(23)に心酔したコンジに、アスターからオファーの知らせが届いた。「私が手掛けた『セブン』や『愛、アムール』、『ファニーゲーム U.S.A.』を気に入ってくれていたそうです。話してみると映画に対する情熱が強く、また映画の趣味も私と似ていたんです。ピエル・パオロ・パゾリーニや溝口健二、黒澤明、ジョン・フォード、今村昌平たちの話で盛り上がりました」と振り返る。

「朝から昼間と夜の対照的な光が魅力的でした」

ミーティングでアスターから聞かされた本作のテーマが“モダンウェスタン”だったという。「監督から概要を聞いた時に思い浮かんだのが『大いなる決闘』や『荒馬と女』といった西部劇のクラシックでした。実際に脚本を最初に読んだ時は、西部劇というより政治的な物語という印象でしたが、読みながらワクワクしました。その後、撮影に入ってから西部劇の雰囲気だと気づいたんです。監督がいうモダンウェスタンのイメージは、砂漠のような閉ざされた空間でおもに2、3名のキャラクターが繰り広げる闘いのドラマ。ただし舞台は現代で、彼らは馬でなく車に乗っているんです」


【写真を見る】砂漠での撮影はリベンジだった?ダリウス・コンジが明かすニューメキシコ特有の“光”と“闇”
【写真を見る】砂漠での撮影はリベンジだった?ダリウス・コンジが明かすニューメキシコ特有の“光”と“闇”[C] 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

ニューメキシコでロケハンをしたコンジは、強い光のコントラストに魅せられたと語る。「エディントンに仕立てる場所を探すため、監督とプロデューサー、プロダクションデザイナーと車でニューメキシコ中を走り回りました。そのなかで感じたのが、目の前が真っ白になるほどの光の強さと、目の前のものすら見えないような真っ暗な闇。朝から昼間と夜の対照的な光が魅力的でした」。もともとコンジは砂漠が大好きだったそう。「撮影アシスタント時代にサハラ砂漠で3か月間撮影をしたことがあって、それから虜になりました。なにもない砂漠は、ミニマムでありながら自分の精神を見つめ直すことができる場所だと感じています」。かつてコンジはリン・ラムジー監督と西部劇映画『ジェーン』(16)をニューメキシコで撮影しようとしていた。残念ながら2人は企画から降板し、映画は別のスタッフによって完成されたため、本作はリベンジとも言える。

関連作品