アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第45回 嫌な予感
MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第45回はメンバーたちの安否を気にする都筑だったが…。
ピンキー☆キャッチ 第45回 嫌な予感
「お仲間??メンバーは・・防衛省のみんなは無事なのか?」
あの爆発以来誰の生存も確認出来ずにいた。突然の申し出に、都築は前のめりになって男の肩を掴んだ。
「無事も何も。だってあの爆発もエンターテイメントの一環ですから。『シャンパン爆発させてみた』ですよ。この星で現地調達した物を用いた『やってみたシリーズ』です。反響も大きかったですよ!!派手な仕掛けでパ〜ンと!!!」
各所で盗難に遭った大量のシャンパン。突起物の段階でも検出され、総員で頭を捻って模索していたが、何の事はない。揮発成分を用いたイタズラだったのだ。都築はまた頭に血が上る思いがしたが、この男を問い詰めても暖簾に腕押しのような気がした。今は冷静に、話を先に進める事にした。
「あなたと同じ様に、皆さんにも病室をあてがいました。いわゆる脱出ゲームを観察していたのですよ。水を使っての現状把握、脱出で都築さんが見事にトップ通過でしたがね。ほとんどの方が扉の電気ショックでリタイア状態でしたぁ!!」
「電気ショック・・あんな危険なものを・・いいから早くみんなに会わせてくれ!」
男は奇妙なステップを踏みながら先導し始めた。ここまでに説明された異星人であることや科学力の差は、この船内を巡る中で実感させられた。床も壁も天井も繋ぎ目がなく、頑丈かつクッション性のありそうな素材だった。扉のようなものは無く、青白く光る箇所を通ると別の空間に移っているといった具合だった。3度ほどその光を抜けると、30mはありそうな楕円形の大きな球体が置かれた空間に出た。その球体は半透明で、遠目で中で何か動いているのが見えた。ハッとした都築は男を追い抜かし駆け出した。
「みんな!遠山も・・・・あっ吉崎さん!!」
球体は触ると弾力のある感触で、不快な反響は残るも声は届いた。
「都築さん大丈夫やった!?なあ、ここどこやの!? ・・・その人誰?」
「ああすぐに説明する。とりあえずみんな怪我は!?」
伏せていた吉崎と遠山が立ち上がり、ほっとした表情で駆け寄った。
「都築、良かった。みんな無事だ。」
「都築さんは?怪我はありませんか?」
「ああ平気だ。鈴香も七海も理乃も、大丈夫か?」
「うん、私らも平気です」
メンバーの無事も確認出来、都築は全身の力が抜ける思いがした。防衛省職員の自分達は有事の際の覚悟はできているが、メンバーの彼女達は未成年で親から預かっている体だ。ほっとしたのも束の間、確認しておかなくてはならないことが山ほどある。後方でニヤニヤと様子を見ている男に向き直した。
「他の職員達は?」
「他の?ああ、防衛省のお仲間達ですか。業務を続けていますよ。シャンパン大爆発の後に忽然と姿を消したあなた方の捜索隊も作られましたが、ここはまあバレないでしょう。どうやら苦戦してるようですね」
「ではここにいる私達だけなんだな?」
「ええ。皆さんは私達のプロジェクトの主要人物。他の方々は言ってみればモブキャラですから。大爆発イベントの後に皆さんをこちらに転送し、お次は大脱出イベントというわけです!!皆さん!大脱出トップ通過の都築さんに拍手を!!」
広い空間に男の拍手がこだました。都築はみんなに、これまで聞いた事実をかいつまみながら説明した。メンバーを中心に怒りの色をむき出しにしたが、更に何か起きては困る。奇妙に戯ける男の動向を横目にしながら都築はなだめ、話し合いの末、代表して吉崎が質問する事になった。
「君、質問をいいかね」
「ええ、何なりとご自由に」
「君たちのその、撮影というのか、それはもう終わったのかね?」
「とんでもない!このエンターテイメントが我々の星でどれだけ反響が大きいか!ようやく見つけた素晴らしい娯楽なのですから!!」
「しかしだ、こうして誰かに危害が加わる事は決してエンターテイメントなんかじゃない。君たちは高度な文明を持っているのだろう?こんな野蛮な行為は本来君たちの崇高な文化の意に沿わないものなんじゃないか!?」
芯を突いたと思われる吉崎の問いかけに、男は心底驚いたようにキョトンとした顔を向けた。
「ええ、確かに我々は同じ星の共同体同士で危害を加え合うことなどあり得ません。そんな行為は文明が著しく低いあなた達の文化だ」
「だったらこんな事はすぐやめるべきではないのかね?」
「なぜですか?私達は自分達の種は守りますが、あなた達異種を守る義務も、そうした本能も持ち合わせていません。皆さんが傷付こうが絶命しようが一向に構いません。質問は以上ですか?」
都築は腹の底から肝の冷える思いがした。男の返答が冗談でも脅し口調でもなく、純粋無垢なものであったからだ。
「終わりでないとしたら・・ここからは何を企んでいるんだ?」
「様々な企画の立案がされていますがね、ゆくゆくは大規模なサバイバルゲームが催されるでしょうね。この星の住人全てを巻き込んだ生き残り戦ですよ!!」
「・・ここまでの関わりでわかっていると思うが、もちろん我々も応戦する。それが地球規模となれば、抵抗する軍事力は君達の想像以上のものだ。ここ日本で苦戦している程度では到底無理だと思った方がいい」
ここが潮目と感じたのだろう、鈴香と七海と理乃がサッとフォーメーションを組み、臨戦体制に入った。都築も何が起きても対応できるよう身構える。その様子を男は苦そうな表情で眺めると、徐々に口が細かに震え始め、大きく噴き出して笑い始めた。
「苦戦!??苦戦!!!これはいい!!吉崎さん!!苦戦とおっしゃっいましたか!!!そうかそうか、そうですか! 皆さんも雄々しくてよろしい!!あぁ・・・これはまた一からの説明になってしまいますね。皆さん!!これまで私達の襲撃に対する皆さんの応戦はお見事でした!バリアを破るシステムの活用!お若い彼女達の抵抗!音波での弱点の突き方などなど、目を見張るエンターテイメントでした!!そんな皆様に残念なお知らせを・・・・」
今にも襲いかからんばかりのメンバーを都築は手で制し、男の言葉を待った。わずかだが奴らの科学力を垣間見ている分、嫌な予感がしていた。
「あなた達の軍事レベルに合わせていたに決まっているではないですか!!!皆さんで言うところの闘鶏、酔っ払いの殴り合い、子供の喧嘩を楽しむのと同じエンターテイメントですよ!!!」
男は大袈裟にマントをひるがえすと、全員の顔を舐め回すように眺めて呟いた。
「本来一瞬で消せるんだぞ」
(つづく)
文/平子祐希
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。
