『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』“貴族出身”の脚本&製作総指揮ジュリアン・フェローズの手腕に迫る

『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』“貴族出身”の脚本&製作総指揮ジュリアン・フェローズの手腕に迫る

20世紀初頭のイギリス、ヨークシャーを舞台に、貴族クローリー家とその屋敷で働く使用人たちの人生を描くドラマシリーズ「ダウントン・アビー」。世界的な大ヒットシリーズの映画第3弾『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』が、2026年1月16日(金)より公開される。公開を1か月半後に控えた今回、脚本と製作総指揮を務め、実際に貴族出身であるジュリアン・フェローズの手腕について読み解いていく。

2010年9月の放送開始以来2015年のシーズン6までの全52エピソードをもって幕を閉じた本シリーズは、2019年に劇場版として復活。社会現象を巻き起こすと、15年にわたり世界200か国以上で放送され英国ドラマの金字塔ともいえるシリーズとなった。そのテレビドラマシリーズで、企画、脚本、製作総指揮を担当し、最新作『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』の脚本も手掛けたのが、シリーズの生みの親、フェローズだ。

フェローズの作品が世界中で愛される最大の理由は、イギリスの階級社会と、そこに生きる人々の人間模様に対する並外れた洞察力と愛情にあるといえる。映画『ゴスフォード・パーク』(01)で、1930年代の田舎の豪邸を舞台に、使用人と貴族の複雑な関係をサスペンスフルに描きだし、第74回アカデミー賞脚本賞の栄冠を獲得。「ダウントン・アビー」では「階段の上」の貴族と「階段の下」の使用人、両方の視点を温かく、かつ細やかに描いた群像劇が世界的な大ヒットとなり、テレビ界最高峰のエミー賞を受賞している。

彼は自身も一代貴族の称号を持つ(世襲貴族ではない)ため、上流階級の生活を内側から知る一方で、庶民的な共感力も持ち合わせていることが、彼の物語に深いリアリティと普遍的な魅力を与えているといえる。シリーズ開始当初を振り返り、フェローズはこう語る。「時代劇はもう終わったと思われていたので、ここまで続くとは予想していませんでした。マギー・スミスをはじめ、希望した俳優が全員参加してくれたことが成功の兆しだったのかもしれません。通常落ちるといわれる視聴率が第2話で逆に100万人増えた時、これは良い作品だと感じました。そしてアメリカでの放送が世界的ヒットにつながったのです」。


長年にわたり描かれてきたクローリー家と使用人たちの絆、愛、困難の物語は本作で一つの旅路を終える。フェローズは締めくくりとして「オリジナルの構想とキャストでここまで来られたことを誇りに思う」と語った。

文/サンクレイオ翼

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