岸井ゆきのと宮沢氷魚が初共演作『佐藤さんと佐藤さん』で初対面から意気投合「絶対会ったことあるよね!?」

岸井ゆきのと宮沢氷魚が初共演作『佐藤さんと佐藤さん』で初対面から意気投合「絶対会ったことあるよね!?」

第38回東京国際映画祭のウィメンズ・エンパワーメント部門に選出された『佐藤さんと佐藤さん』(11月28日公開)のジャパンプレミアが10月30日にTOHOシネマズ 日比谷で開催。W主演を務めた岸井ゆきの宮沢氷魚天野千尋監督が舞台挨拶に登壇した。岸井たちは、互いに好印象だったことを語りあった。

【写真を見る】岸井ゆきのと宮沢氷魚が互いを褒め合う
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満員の観客を前に岸井は「とても緊張しているんですけど、同時にすごくうれしい気持ちでいっぱいです。きっとおもしろいと思います!」と出来栄えに自信をのぞかせ「たぶん、この映画は自分のことを話したくなったり、自分のことを振り返ってみて『こんなことあったな』と思える映画になっていると思うので、帰り道に誰かと話したいという気持ちになっていただければと思っています」と語る。

宮沢も映画のお披露目を迎え「1年以上前に撮影したんですけど。今日、皆さまに観ていただけるということで、ようやくスタートラインに立てたのかなという気持ちがすごくあって、今日を迎えるのが楽しみでした」と晴れ晴れとした表情を見せる。

佐藤サチ役の岸井ゆきの
佐藤サチ役の岸井ゆきの

同じ“佐藤”の名字を持つサチとタモツの15年の軌跡を描く本作だが、岸井と宮沢は今回が初共演となった。お互いの印象について岸井は「初共演でしたが、本読みで初めてお会いした時から『絶対に会ったことあるよね?』みたいな印象があって…。(会ったことは)ないんですけど(笑)。それくらい、驚きのない空気感というか本当に自然にお互いのことを楽に話せるような関係性がすぐにできたので、お芝居に没入しやすかったです」と振り返る。

さらに岸井は、宮沢の人間性について「本当に優しくて穏やかなので、ピリつく現場も時にはあるんですけど、そういうことは起こらないだろうなという安心感もありました。本当に穏やかな時間を一緒に過ごさせていただきました」と語ると、宮沢は「ちょっと恥ずかしいです」と照れ笑い。

佐藤タモツ役の宮沢氷魚
佐藤タモツ役の宮沢氷魚

宮沢も「クランクインする前から、ゆきのちゃんの作品はたくさん観てきて、本当に魅力的な女優さんだなというふうに思っていました。共通の知り合いがいて、『ゆきのちゃんは本当にすばらしいよ。本当に優しくて魅力的なんだよ』という話は聞いていたんです。本読みの日に初めてお会いして、僕の想像していたゆきのちゃんよりも遥かに優しくて、太陽のような存在でした」と絶賛する。

物語の魅力について、岸井が「約2時間の脚本で、15年をギュッと詰め込めるのはすごいことだと思いますが、その物語が決して大雑把ではなく、すごく些細なことを大切に描いていて、私は『この世界に入りたい』と思いました。実生活では体験したことのない夫婦生活というものを、もしかしたらここで垣間見ることができるかもしれないとも思いましたし、演じるのが楽しみになった脚本でした」とコメント。

宮沢も「とにかく脚本が丁寧で、15年のスパンを描いているので、ピックアップする部分は本当にごくわずかなんですけど、それがきれいに線を結ぶように繋がっていたんです。僕は読んでいて、描かれていない空白の時間、そして2人がその先に歩む人生というものがどういうものなのか?とすごく興味が湧いてきて『この世界の一員になりたい』、『タモツという人物を演じたい』という想いがふつふつと高まりました」と、脚本を読んだ段階から、本作に強く惹きつけられたと明かす。

メガホンをとった天野千尋監督
メガホンをとった天野千尋監督

2人のキャスティングについて、天野監督は「私も2人の作品をたくさん観てきて、2人が好きでオファーしたんですが、実際にサチとタモツを演じてもらったら想像以上によくてよかったです!」と手放しで称賛。岸井について、天野監督は「本当にお芝居の密度が濃くて、1個も嘘やごまかしがない芝居をメチャクチャ力強くやってくれるんです。『サチってこんなに力強い人だったんだ!』と改めて知るみたいなことがたくさんありました。サチはデリカシーがないところや、突っ走っちゃうところがあり、下手したら嫌なヤツに見えかねないんですけど、岸井さんはチャーミングで愛嬌があるので、サチを許せてしまうキャラクターにしてくれました」と岸井の表現力を称える。

笑顔を見せる岸井ゆきの
笑顔を見せる岸井ゆきの

宮沢に関しては「クールな役をやられている姿をよく拝見していたんですけど、(本作のタモツは)ちょっと情けないんですね。こういう情けない役を氷魚くんに演じてもらったら、実はおもしろいんじゃないか?と目論んでいて。実際にタモツを見たら、本当におもしろいし、このクールなビジュアルだからこそ、情けなさが愛おしく見えて、脚本になかったタモツ像が見えてきました」とギャップによる魅力を強調。改めて「2人に頼んだことですごくキャラクターが膨らんだなっていう気がしています」と主演の2人への感謝を口にした。

優しさを称えられた宮沢氷魚
優しさを称えられた宮沢氷魚

なお、本作は東京国際映画祭において、昨年より新設されたウィメンズ・エンパワーメント部門での上映となるが、天野監督は「女性を応援するということで、すごく大切なムーブメントだと思いますし、いまの時代に必要だと思うので、選出されて光栄です」と喜びを口にしつつ「複雑な気持ちもあって、あえてウィメンズ・エンパワーメント部門を作り、女性を応援しようという世の中の状態なんだなとも感じます。こういう状況がなるべく早く変わっていくといいなという気持ちも同時にあります」とコメント。

岸井も、自身が女性の監督やスタッフと作品づくりをする機会が多いことに触れつつ「みんな、すごくたくましいんですが、“ウィメンズ・パワー”というより、その人“個”のパワーがすごく強いなと思っていて、ウィメンズというところをあまり気にしてはいなかったんです」と語り、自身についても「たくましく生きています(笑)。それがこの映画を通じても見えてくると思いますし、(同部門に)選出されたことはうれしいですし、背中を押すような作品だと思いますがが、男女がというよりも、パワーそのものを見いだしていただけたらと」と呼びかける。

笑顔でフォトセッション
笑顔でフォトセッション

宮沢は、映画の現場でも女性スタッフが増えていることに言及。本作では、妻のサチが弁護士として外で働き、タモツが家で育児をする姿も描かれるが「僕たちはそれが正解だと伝えたいわけではなく、夫婦やパートナー、恋人、家族がそれぞれの正解、幸せを見つめるための形を探し出してほしいので、そういう意味で、この部門にノミネートされたことはとてもうれしいです」と作品に絡めて語った。


文/山崎伸子

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