ハリウッドリメイク決定の『KILL 超覚醒』を、インド映画ブームの仕掛け人が大絶賛!「歴史に残る作品だと思います」
第48回トロント国際映画祭を皮切りに、世界各国の映画祭で熱烈な称賛を浴びたインド発のバイオレンス・アクション『KILL 超覚醒』(11月14日公開)。本作の試写会が10月29日に都内で開催され、映画評論家の江戸木純が登壇した。
物語の舞台はインド東部ジャールカンド州から首都ニューデリーへの約1200キロメートルのルートを疾走する寝台列車。そこに偶然乗り合わせた特殊部隊の最強戦士と、総勢40名におよぶ最凶強盗一族との死闘を、途中停車なし、逃げ場なしという究極のソリッド・シチュエーションのもとで映しだしていく。
1990年代後半に『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95)を日本に紹介し、近年ひときわ加熱しているインド映画ブームの仕掛け人となったことでも知られる江戸木。「インド映画のアクションで、ここまでハードでリアルなものはほとんど見たことがない」と本作を大絶賛すると、「アクション映画の歴史としても、インドネシアの『ザ・レイド』やタイの『マッハ!!!!!!!!』、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』のような歴史に残る作品だと思います」と熱烈にアピール。
さらに「これまでのインドのアクション映画は、CGやファイヤーアクションを使ってファンタジーっぽくなっていた。CGを使って役者がものすごいアクションをできるように見せたりして、ちょっとやりすぎに感じることもありましたが、この作品では本当にアクションをやっている。リアルでここまでやるのは本当にビックリしましたね」とすっかり脱帽した様子。
また、寝台列車で特殊部隊員と強盗団が死闘を繰り広げるというストーリーは、ニキル・ナゲシュ・バート監督が学生時代に長距離列車内で強盗に遭遇したという実体験がモチーフになっているとのことで、「インドの強盗で“ダコイト”と呼ばれている犯罪集団は、ファミリービジネスであることが多く、親戚一同でやっていたりします。この映画の治安の恐ろしさは、とてもリアルに感じました」とインドの犯罪事情について解説。
監督と直接話をする機会があったという江戸木は、本作の参考にした作品を訊ねたと明かす。「やはり『新感染 ファイナル・エクスプレス』。あと『オールド・ボーイ』の残酷なシーンとエモーションの混ぜ合わせ方や、『悪女/AKUJO』も参考にしたそうです。ちなみに大好きな映画はポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』だそうです」と、次々と韓国映画のタイトルが挙げられる。
そのうえで、「本作のアクション監督は韓国のオ・セヨン氏。『コンフィデンシャル/共助』『サスペクト 哀しき容疑者』を担当したり、インド映画も何本もやっていますし、ジャッキー・チェンの作品のアクション監督もやっている人です。韓国映画のバイオレンスってもの凄いですよね。本作はインドと韓国の共同作業というのが最高のかたちで出た映画だと思いました」と語った。
昨年夏に北米で公開され大反響を獲得した本作は、「ジョン・ウィック」シリーズのチャド・スタエルスキのプロデュースのもとでハリウッドリメイクが決定している。「スタエルスキは元々アクション監督で、世界中のアクションをチェックしている。そのなかで本作が目に留まったということですよね。どんなものができるのか」と期待を寄せつつも、「ただハリウッドで作ったら、ここまでバイオレンスにはできないかもしれませんね」とインド映画だからこそ実現できた熱量の高さをアピール。
そして最後に、「インド映画というのは2時間半や3時間あって、歌と踊りがあるというようなものでした。それがいまや世界のスタンダードのところにやってきた。スタジオも含め、技術にしても俳優にしても、みんな上手くて、本当にハリウッドなどと対抗してすごい映画をどんどん作ってくる時代になってくるのかなと。この作品は、そういう意味でもエポックメイキングなのではないかなと思います」と、急成長を続けるインド映画の躍進ぶりを称えていた。
文/久保田 和馬
