新時代パラレルワールドの傑作『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』監督インタビュー
<ペク・スンビン監督インタビュー>
Q.本作はどんな魅力のある映画でしょうか。
「私が言うのもなんですが…。知人の映画監督が、本作を観てこう言いました。『題材はパラレルワールドなのに、こんな語り口の韓国映画はあっただろうか。同じパラレルワールドを描くにしても、アメリカで10代を過ごした監督は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のような映画を撮るけど、韓国でもっとも保守的な土地、大邱(テグ)で10代を過ごした君は、パラレルワールドをこんなふうに考えるんだな』と」
Q.2021年のソウル国際プライド映画祭で初公開された際に、「これは後悔と悔恨の映画であり、パラレルワールドのもう一人の自分の物語から生まれる温かな共感の映画」とおっしゃっていましたが、もう少し詳しく聞かせてください。
「物語は、当時の自分の姿が嫌で、いつも違う自分を夢見ていた10代の少年ドンジュンの話です。別の宇宙にもう一人の自分がいて、自分を支えてくれた友人がいる。そんな時、その友人に大きな出来事が起こり、助けられなかった後悔が、それぞれ異なる運命を生みます。映画ではその運命を3つのパラレルワールドとして描きます。後悔をどうにかして正そうとする一人の物語であり、若いころにはできなかったことを、年を重ねてからやっとその友人のためにする物語でもあります。最終的に、自分の後悔の底にいるのはその人であり、この長い旅の終わりは、その人に会うための旅路だという話です」
Q.パラレルワールドという概念について、監督はどう考えていますか?
「主人公ドンジュンが憧れるカンヒョンは、いつも高い場所に登って歩きます。危険なのに。ドンジュンが『なぜ危ないことをするのか』と聞くと、『うんざりする人生に自分なりの反抗をしているんだ』と答える。足を一歩踏み外せば落ちるように、手を少し伸ばせば別の世界へ行ける──私はそれがパラレルワールドだと思っています。大きな決心をして行く場所ではなく、ほんの小さな選択の違いが別の人生の道筋を作る、そんなものです」
Q.観客へのメッセージをお願いします。
「観終わったあと、『自分が別の選択をしたらどんな人生だったか』を考えてみてほしい。そういう想像が、これからをもっと懸命に、そして愛をもって生きられるきっかけになると思うからです。観客のみなさんにも、それを感じてもらえたらうれしいです」
文/平尾嘉浩

 
             
                             
                     
               
             
               
               
       
     
         
         
         
         
         
         
         
             
             
            