ジュリエット・ビノシュ、監督デビューのきっかけはロバート・レッドフォードと告白!映画『IN-I IN MOTION』制作での気づきにも言及
開催中の第38回東京国際映画祭(TIFF)にて、ジュリエット・ビノシュの監督デビュー作、映画『IN-I IN MOTION』が特別上映され、上映後のステージにはビノシュが登壇。作品が出来上がるまでの過程や、監督として映画制作に関わったことでの気づきなどを語った。
本作は、英国のダンサー兼振付師のアクラム・カーンとビノシュが世界各国で公演を行ったダンス・パフォーマンスを記録したドキュメンタリー映画。共同プロデューサーをMEGUMIが務めている。
制作に至った経緯について「舞台は2007年にやったもの。1年半くらい続きました」と振り返ったビノシュ。ニューヨーク公演後にロバート・レッドフォードがビノシュの楽屋を訪れ、「映画を作るべきだ」と言ってくれたと明かす。「すごく驚いたけれど、舞台を通して貴重な経験をしたので、やってみたいと思いました」と当時の心境を語ったビノシュ。自身の妹にメイキング・シーンの撮影を依頼していたそうで、「それから15年経ったけれど、それを編集して映画を作りました」と笑顔を見せる。映画を作る過程では「いい時も悪い時もあったけれど、そういうところも観ていただけたらと思いました」と見どころを挙げていた。
本作は170時間に及ぶ素材を編集したという。「脚本がなかったので、ストーリーを1から作るところから始まりました」と話したビノシュは「3人のエディターと一緒に作業をしていきました。最初の頃はいろいろ決まっていなかったことも多かったけれど…」と序盤の作業を振り返る。撮影した映像を観ると「女優としてカメラの前で演じていた時には気づかないことに気づけた」とし、そういったことが面白いと感じられたと充実感を滲ませた。改めて発見したことは音響の大切さだと力を込めたビノシュは「舞台に意味を持たせること」への気づきがあり、再発見だったとも笑顔で伝えていた。
Q&Aコーナー前にはMEGUMIが駆けつけビノシュに花束を贈る場面も。「いままで会った女性のなかで一番かっこいい女性!」とのMEGUMIの言葉に、少し照れた表情を見せたビノシュは「MEGUMIさんがこのプロジェクトに参加してくれて本当にうれしかったです。映画だけなく、私の人生に加わってくれたことをうれしく思います」と感謝のメッセージを伝えていた。
ビノシュとの出会いについてMEGUMIは「初めてお会いしたのはカンヌ国際映画祭の期間中。私が主催しているジャパン・ナイトというイベントの特別ディナーの席でご挨拶させていただきました」とニッコリ。ビノシュが作った映画や、俳優として名作に出演している姿に「共鳴しました。生き様にも共鳴し、素敵なご縁をいただきました」と話したMEGUMIは、改めて出会えたことへのよろこびを噛み締めていると、ビノシュも「MEGUMIさんも女性に関わるプロジェクトをしています。私も女性としての意識、考え方、世界と関わっていくかどうかを考えています。そういったところでもとても共感しています」と相思相愛といった様子で顔を見合わせていた。
Q&Aのコーナーでは観客からの熱心な質問に、ビノシュが通訳を入れるのを忘れるほど真剣解答をする場面。ダンスを勧められたのが43歳だったと語ったビノシュは「できると信じてくれた。私のなかに可能性を見せてくれたのは奇跡です。精神的にも肉体的にも難しいことだったけれど、(勧められてから)2年後に、スタートさせました」と笑顔。またプロジェクトの始まりを改めて問われると、「私の場合は愛というものについて常に疑問を持っていました。どうやったら持続させることができるのかを考えていました。そこから思考が始まりました。その経緯で私が学んだことは、自分の感情や必要なものを手放した時になにか違うものが手に入るということでした」と作品を通じて自身が考えたことや自身がたどり着いた答えを包み隠さず伝えるビノシュの真摯な姿に、客席からも「なるほど」「分かる」と言った声が漏れ聞こえていた。またビノシュは「女優としてはいつも新しいことに挑戦したい。リスクを負うこともやってみたいと思っています」と俳優としての自身の考え方についても語っていた。
今年の東京国際映画祭(TIFF)は、11月5日まで日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区にて開催される。
取材・文/タナカシノブ

