2025年は4本映画出演!『ショウタイムセブン』『アフター・ザ・クエイク』『見はらし世代』『平場の月』怒涛の出演で見せた井川遥の新境地

2025年は4本映画出演!『ショウタイムセブン』『アフター・ザ・クエイク』『見はらし世代』『平場の月』怒涛の出演で見せた井川遥の新境地

2025年、進化して再び開花した井川遥の魅力

そうしていよいよ2025年、咲き誇るように満開状態に!韓国映画『テロ,ライブ』(13)をリメイクしたリアルタイムサスペンス『ショウタイムセブン』では、主演の阿部寛が演じる元人気キャスター、折本の盟友である記者を颯爽と演じた。生放送中に爆弾犯との交渉に臨む暴走しがちな折本や、いろいろな思惑が錯綜してみなが浮足立つなか、唯一、地に足を付けて真実を炙りだそうとする記者を、肝の据わったカッコよさと重みを感じさせる演技で魅せ、作品をキュッと引き締めた。

井川演じる母の由美子。家庭よりも仕事を取った夫、初(遠藤憲一)に愛想を尽かす(『見はらし世代』)
井川演じる母の由美子。家庭よりも仕事を取った夫、初(遠藤憲一)に愛想を尽かす(『見はらし世代』)[c]2025 シグロ/レプロエンタテインメント

また、今年のカンヌ国際映画祭監督週間に、当時26歳の団塚唯我が日本で史上最年少監督として選出され、高い評価を得て注目を集めた『見はらし世代』では、仕事優先で家族をおざなりにする夫に対する不満と孤独に苛まれる妻で二人の子を持つ母親役を担った。子どもの前で気丈に振る舞いながらも、空虚を抱えたぼんやりした様子がリアルで、どこか漂う危うさが観る者をハラハラとさせ惹きつける。彼女は前半で亡くなってしまうのだが、その不在はその後の家族に強烈な影響を及ぼすことに。物語の主軸は疎遠になってしまった父親と二人の子どもたちの関係ではあるが、その妻/母の存在感は最後まで引っ張られる(なぜかは観てのお楽しみ)。最後には、すすり泣きを誘うほどに。夫を演じるのは遠藤憲一。

井川が新興宗教にハマる母に扮する『アフター・ザ・クエイク』
井川が新興宗教にハマる母に扮する『アフター・ザ・クエイク』[c]2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ

村上春樹の連作短編小説「神の子どもたちはみな踊る」をドラマ化した「地震のあとで」と物語を共有し、同作に新たなシーンを追加&再編集した『アフター・ザ・クエイク』。本作では、原作タイトルと同じ一篇、2020年のエピソードに登場。新興宗教にハマりこみ、息子の善也(渡辺大知)を“神の子”として育て上げようとした母親を演じている。

かつて初恋だった男女が、大人になって再び惹かれ合う

それぞれ伴侶と別れたのち、地元で再会する青砥と須藤。同級生の2人はやがて惹かれ合うように(『平場の月』)
それぞれ伴侶と別れたのち、地元で再会する青砥と須藤。同級生の2人はやがて惹かれ合うように(『平場の月』)[c]2025映画「平場の月」製作委員会

そうしてついに『平場の月』である。中学時代の同級生、青砥健将(堺雅人)と須藤葉子(井川)が再会。青砥は離婚して、須藤は夫と死別したあとにいろいろあって地元に戻って来た。互いの身の上話や人間ドックの話題やらで意気投合した二人は、気の置けない飲み友に。やがて“実は初恋同士だった”二人は惹かれ合っていく――。

互いを中学時代のままに「青砥」、「須藤」と苗字呼びする、そのぶっきらぼうさが逆にキュンとさせる。ようやく互いの初恋相手、そして心の奥底にずっと居続けた相手とめぐり合えたのに、苛酷な運命が襲い掛かり…。そこからが、また味わい深い。大人だからこその寄り添い方と、大切な相手だからこその判断と。しかも現代劇のラブストーリーで主演を務めるのは初という堺との組み合わせ。これまた新鮮さもあいまって、驚きと感動がさざ波のように尽きることなく押し寄せる。これ以上は野暮なので、二人の恋の行方は各人が劇場で体感し堪能して欲しい。

お互いのこれまでを明かす2人(『平場の月』)
お互いのこれまでを明かす2人(『平場の月』)[c]2025映画「平場の月」製作委員会

相変わらずの美しさと透明感を損なわずして、リアルな大人の女性の実情やその姿で強い共感を呼び寄せる『平場の月』の井川遥。彼女自身の代表作にして、また、大人の恋愛映画として長く記憶されるに違いない。そうして自由に羽ばたき始めた井川の新たなる快進撃の行く先を、注目しないわけにはいかないのである。


文/折田千鶴子

※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」、草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前+刀が正式表記

関連作品