2025年は4本映画出演!『ショウタイムセブン』『アフター・ザ・クエイク』『見はらし世代』『平場の月』怒涛の出演で見せた井川遥の新境地
2025年は女優、井川遥の新たなる始まり、かつ快進撃を知らしめた記念すべき当たり年であることは誰もが認めるだろう。そんな充実の年を締めくくるにふさわしい、『平場の月』が11月14日より公開中だ。まさに井川の新境地と言っても過言ではない本作は、酸いも甘いも知った大人たちの胸をせつなく揺さぶって、むせび泣かせるはずだ。“こんなにも大切な恋だった…”と噛み締めさせながら。
井川は近年、しばらく俳優業が控えめな印象があった。勝手な邪推として述べるが、およそ11年間に渡って某ウイスキーのCMを勤め上げた陰には、「日本全国の疲れた人々を癒し続ける存在」としての並々ならぬ自覚と努力があったのだろう。それゆえ、ある程度の役幅に限定せざるを得なかったのではないだろうか。そんななか、今年の井川の活躍には目を見張るものがある。映画に限っても『ショウタイムセブン』(25)、『アフター・ザ・クエイク』(公開中)、『見はらし世代』(公開中)、『平場の月』と4本が公開。そして、そのどれもが、「井川遥ってこんな役もやるんだ」とか「こんな井川遥、見たことない」といった感慨を抱かせるのである。なかでも、堺雅人と共にW主演を務める『平場の月』は、ドキリとするほど“ミドルエイジの実情”にいろいろな側面で踏み込んだ意欲作かつ感動作であり、井川演じる須藤の佇まいからは“挑んだ”感も感じられた。
日本を牽引する映画監督作に次々と出演し存在感を発揮
思い起こせば、映画初出演にして主演作『目下の恋人』(02)で、すでにその好演は高く評価されていた。妊娠するも、DJの恋人との子どもか愛人である既婚男性との子どもかわからないなか、愛を渇望して揺れる女性を繊細に演じ、早くもグラビアアイドルから脱皮し本格的な女優として認知されるように。青木ヶ原樹海を舞台にした4つのエピソードからなる『樹の海』(04)では、元ストーカーで駅の売店員をしながらひっそりと生きる女性を演じ、日本映画批評家大賞を始め複数の映画賞で助演女優賞を受賞するなど順調に実績を重ねる。さらに翌年2006年には、朝ドラ「純情きらり」で個性豊かな3姉妹の次女としてヒロインの宮崎あおい扮する妹を思いやる女性を好演し、その人気を全国のお茶の間へと広げた。
また、黒沢清の『トウキョウソナタ』(08)、西川美和の『ディア・ドクター』(09)、青山真治の『東京公園』(11)など、日本映画界を牽引する作家たちの作品でもキラリと光る存在感を示してきたことにも、改めて気づかされる。そんな井川自身が、「それまで演じたことのない役」と語ったのがドラマ「流星ワゴン」だ。重松清の原作を読んだファンは、「夫婦関係に倦怠した、あの古女房を井川遥が演じるのか?」と衝撃を受けたに違いない。もちろん、そこは地上波ドラマ、かつ井川のイメージが損なわれすぎる判断も働いたか、衝撃的な設定には変更が加えられている。とはいえ“夫婦のすれ違い”で大きな孤独を抱える妻、美代子を、複雑でリアルな情感を湛えて演じ、むしろ世の女性たちの共感を誘った。ちなみに夫役は西島秀俊。
その後、本人役でカメオ出演したドラマ「拾われた男」では、“癒しキャラ”を求められすぎるゆえの苦悩やストレスをコミカルに演じてみせた井川。もしかするとそのあたりから、再び女優として体当たりできる役を求めていたのかもしれない。そんな予感をさせながらも、ドラマ「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲」では、ヒロインの父親が恋をする整形外科医を好演し、“世間が求める理想の女性像”をやっぱり魅力的に体現。続く、草なぎ剛演じる主人公の妻を演じた「罠の戦争」では、置かれた場所から一歩踏みだす女性を華麗に演じた。
