『トロン:アレス』が北米No. 1スタート、『鬼滅の刃』は外国語映画の新記録を25年ぶりに更新!
先週末(10月10日から10月12日まで)の北米興収ランキングは、人気SFシリーズ「トロン」の15年ぶりの第3作となる『トロン:アレス』(日本公開中)が初登場でNo.1を獲得。初日から3日間の興収は3324万ドルと、1億8000万ドルという高額な制作費を考えるとやや物足りない出足となった。
世界で初めて全面的にCGを使った作品として話題を集め、その後カルト的な人気を誇ることになった『トロン』(82)と、その28年後の3Dブームのまっただなかに公開された『トロン:レガシー』(10)。過去2作はどちらも技術的な革新性を最大の売りとしており(前作は日本国内でも盛り上がりを見せ、結果的に興収21億円を超える大ヒットとなった)、そうした後ろ盾がない今作が苦戦を強いられることも頷ける。
もともと前作の公開時には続編が計画されていたものの、実現に至らず。2015年春にディズニーからゴーサインが出たが、別の作品の興行的失敗の煽りを受けて製作中止に。さまざまな紆余曲折を経てようやく今作に至っており、3Dブームはもちろんのこと、その後に訪れたラージフォーマットブームにも若干乗り遅れてしまったことは否めない。今回のオープニング興収の約3分の2をIMAXなどのプレミアラージフォーマットが占めているとのことで、タイミングがもう少し早ければ、と考えたくなってしまう。
ちなみに批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合が52%で、観客からは86%。前者は前作の51%とほぼ同水準で、後者が同作の64%から大きく伸びているのは救いか。おそらく前作の公開時と比較して、配信サービスの台頭によりかなり古い過去作に容易にアクセスできるようになったことが寄与しているのであろう。
2位に初登場を果たしたのは、チャニング・テイタムとキルスティン・ダンストが共演を果たしたクライムコメディ『Roofman』。メガホンをとったのは『ブルーバレンタイン』(10)や『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(12)で映画ファンから絶大な信頼を得たデレク・シアンフランス監督で、これが9年ぶりの長編映画監督作となる。
刑務所から脱獄してトイザらスに潜伏していた実在の強盗犯を題材にした物語であり、初日から3日間の興収は810万ドルと少々微妙。制作費は1900万ドルと比較的安めなこと、また近年のテイタム作品は『マジック・マイク ラストダンス』(23)や『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(24)など、どれも初動で1000万ドルに届かなかったことを考えるとこれが妥当なラインかもしれない。作品の評価は堅実に高く、特に批評家からの評価が上々なようだ。
そんなテイタムも英語吹替え版で参加している『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(日本公開中)は公開5週目で7位にねばっているのだが、この週末に大記録を達成。北米累計興収1億2866万ドルに達し、『グリーン・デスティニー』(00)の同1億2853万ドルを抜いて、北米における非英語圏製作の外国語映画で歴代No. 1のヒット作に。
さらに全世界興収では5億8000万ドルを突破しており、2025年公開作の第9位に。上位にいるのは『ナタ 魔童の大暴れ』を除き、いずれもハリウッドのメジャースタジオの大作ばかり。そのなかに加わったということはもちろんだが、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』など今年公開されたマーベル映画3本をすべて上回っている点は驚くべきことだろう。
文/久保田 和馬