“新海ワールド”を実写で再現した『秒速5センチメートル』、初動4日間で興収5億円突破の2位スタート!オリジナルアニメ実写化のモデルケースとなるか?
10月10日から10月12日までの全国映画動員ランキングが発表。公開から絶好調が続いている『チェンソーマン レゼ篇』(公開中)が、この週末も快走を見せて4週連続No.1を達成。その成績の詳細は後述するとして、まずは惜しくも2位スタートとなった松村北斗(SixTONES)主演の『秒速5センチメートル」(公開中)にフォーカスすることにしよう。
『秒速』がオリジナルアニメ実写化のモデルケースに?
『君の名は。』(16)などで知られる新海誠監督が2007年に発表した同名の中編アニメーション映画を、長編実写作品として再映画化した『秒速5センチメートル』。初日から3日間の観客動員は27万8000人、興行収入は4億200万円を記録。「スポーツの日」の祝日となった10月13日を含めた公開4日間の累計成績では動員38万人&興収5億円を突破している。
すでに俳優としてめざましい活躍を見せている松村は、意外にも今回が初めての映画単独主演(『ライアー×ライアー』では森七菜と、『夜明けのすべて』は上白石萌音とダブル主演となっていた)。公開規模も作品によってかなりばらつきがあるためそれぞれとの比較は難しいが、今年2月に公開された『ファーストキス 1ST KISS』(25)と動員を比較してみると、およそ160%。これは上々なスタートと考えて問題ないだろう。
アニメ化された漫画や小説を実写化するパターンは数えきれないほどあるが、本作のようにオリジナルのアニメ映画を実写リメイクする例はまだ少なく、すぐに思い浮かぶところでは2015年にアニメ映画、2017年に実写映画が公開された『心が叫びたがってるんだ。』ぐらいであろう。もっとも、オリジナルアニメ映画は新海監督や細田守監督の成功で注目度を増した時期もあったが、コロナ禍以降はたとえ良作であっても興行的な苦戦傾向が続いているのだが。
人気を集めたアニメ作品を実写化したら、というある意味で“ifの世界”の発想を具現化するのは決して容易なことではないが、少なくとも今回の『秒速』においてはあらゆる面でハマった企画といえるだろう。CMやMVなどで写真家として培ってきたセンスを映像に落とし込んできた奥山由之監督のスタイルは、いわゆる“新海ワールド”の再現にはもってこいの人選であったし、すでに新海アニメで声優経験のある松村も主人公として的確。
そもそも新海作品は、たとえファンタジー性の強い作品でも“アニメにしかできない”ことをやるのではなく、アニメという表現方法のメリットを最大限に活かしてとことん美麗化した世界観が強みだ。本作が成功を収めてオリジナルアニメの実写化のモデルケースとなれば、優れたオリジナルアニメ映画の選択肢も広がり、アニメ文化はもちろん、実写の界隈もさらに発展していくことだろう。