世界が注目するパク・チャヌク最新作『NO OTHER CHOICE』、異例の大ヒット『ゾンビ娘』など夏&秋に公開された韓国現地の話題作
ゾンビになった娘と共生!?変化球で大ヒットした『ゾンビ娘』
ヨン・サンホ監督の『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)の大ヒット以来、ゾンビが登場する韓国映画やドラマが次々にヒットを飛ばし、それらは“Kゾンビ”と呼ばれるようになった。そろそろ出尽くした感もあったが、『人質 韓国トップスター誘拐事件』(21)を手掛けたピル・カムソン監督の『ゾンビ娘』は、ゾンビから人間を守るのではなく、人間からゾンビを守るという逆転の発想で話題となり大ヒット。10月半ばの時点で562万人の観客数は今年最高のスコアだ。
ゾンビになってしまった娘をかくまう主人公ジョンファンをチョ・ジョンソクが好演。“ゾンビは見つけたら殺す”というのが社会の掟となっているが、娘のスア(チェ・ユリ)は感染後も完全にゾンビ化せず、努力すれば意思疎通が図れるくらい人間の意志も残っている。ジョンファンは母バムスン(イ・ジョンウン)が暮らす田舎でこっそりスアをかくまい、噛みつこうとするスアをなだめすかしながら少しずつ人間に戻る訓練を試みる。
ジョンソクは昨夏も主演映画『パイロット(原題:파일럿)』(日本未公開)が観客数471万人を記録し、コメディで2年連続成功を収めている。ただ『ゾンビ娘』の大ヒットは、ジョンソクはもちろんゾンビと人間の間という難しい役どころを見事に演じきったチェ・ユリの貢献も大きかった。
顔を知らない母の死を巡るある秘密とは…!?『顔』
一方、そんな“Kゾンビ”ブームの先駆けとなった『新感染 ファイナル・エクスプレス』のサンホ監督は、低予算映画『顔(原題:얼굴)』(2026年日本公開)で注目を集めた。製作費2億ウォン(約2200万円)ながら観客数100万人を超えたのは、不況にあえぐ韓国映画界にとって希望のニュースだった。主演はパク・ジョンミン。視覚障がい者でありながら著名な篆刻家(てんこくか、篆刻=はんこを作る職人)のヨンギュ(クォン・ヘヒョ)がドキュメンタリーの取材を受ける過程で、その息子ドンファン(ジョンミン)は母の死にまつわる秘密を知っていく。ちなみに、若き日のヨンギュもジョンミンが演じているが、実際にジョンミンの父は視覚障がい者だそう。キャスティングは偶然だったようだが、ジョンミンは「視覚障がい者を演じて初めて父の気持ちがわかった」と語っている。
現在ジョンミンは俳優業を一時中断して自身が営む出版社の仕事に専念しており、耳で聴くオーディオブックの制作に力を入れるのは、父が本を目で読めないことがきっかけだったそう。ジョンミンは11月22日(土)、23日(日)に東京、神保町で開かれるK-BOOKフェスティバルにも登壇予定だ。

