ホン・ギョン、ノ・ユンソ、キム・ミンジュが明かす『君の声を聴かせて』の魅力と撮影現場で学んだこととは?
台湾の名作ラブストーリー『聴説』(09)を韓国でリメイクし、初週の観客動員数第1位を記録した話題作『君の声を聴かせて』(9月26日公開)。夢を見失った青年ヨンジュン、聴覚障がいをもつ妹を支える姉ヨルム、そしてオリンピックを目指す水泳選手ガウル。手話を通じて心を通わせる、青春のまぶしい瞬間を描き出す。
ヨンジュンを演じるホン・ギョンは「D.P. ―脱走兵追跡官―」「悪鬼」などで存在感を示してきた個性派俳優で、本作で初めてラブストーリー主演を果たした。姉ヨルム役のノ・ユンソは『20世紀のキミ』(22)や「イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜」で注目を集め、第61回百想芸術大賞の映画部門新人演技賞を受賞。妹ガウルを演じるのは、アイドル活動を経て女優として活躍の場を広げている、元IZ*ONEのキム・ミンジュだ。
3人がインタビュー部屋に入ってきた瞬間、やわらかな笑顔が広がり、取材の空気が一気に和んだ。そんな3人に、出演を決めた理由から余白の多い演出との向き合い方、手話や新たな挑戦、現場での素顔まで、たっぷりと語ってもらった。
「この映画のように、純粋な愛と成長を描く物語が大切だと思いました」(ホン・ギョン)
――それぞれこれまでの出演作とは異なる雰囲気の映画ですが、オファーを受けた理由を教えてください。
ノ・ユンソ「まずシナリオ自体に大きな力を感じ、ヨルムの気持ちもすごく理解できました。そして、こうした青春映画を撮れる機会というのは、いまの私たちの世代には本当に貴重だと思ったんです」
ホン・ギョン「僕は、20代のうちにどうしても恋愛の物語をやってみたいと思っていました。それは映画でなければならない、という強い想いもありました。いまの韓国映画界では、10代や20代にしか表現できない瞬間をスクリーンで描く機会があまり多くありません。そう思っていた時に出合ったのが、この作品でした。シナリオに自分が感じていることと重なる部分がたくさんあって惹かれました。誰かを見て純粋に恋に落ちるのはいまの時代にはなかなか難しいことだと、同世代として思っていたんです。だからこそ、この映画のように純粋な愛と成長を描く物語が大切なのだと直感しました」
キム・ミンジュ「初めてシナリオを読んだ時、心が温かくなるような気持ちがしました。夢を模索する友人たちの姿や、初恋の物語は、私たちの年齢で直面する悩みとも重なっていて、ガウルもそうですし、ヨルムお姉さんのキャラクターにも共感できる部分がたくさんありました。その過程を同世代の俳優たちと描くことに、大きな意味があると感じました」
――セリフで多くを語らず余白のある作品を、どのように解釈していったのでしょうか。
ホン・ギョン「それこそが、僕がこの映画をやりたいと思った理由なんです。僕にとって良いシナリオとは、余白があって、その余白を自分で埋めたくなるような好奇心をかき立ててくれるものだと思っています。『君の声を聴かせて』にも余白がたくさんあった。それは自分たちで埋めていくものが多いということ。そこがとても良いと感じました」
ノ・ユンソ「そう、みんな同世代なので一緒に作り上げていくのが楽しかったです。“余白の美”という言葉もありますよね。私はこういう穏やかな感性がすごく好きなんです。手話や目線、表情で表現できることもたくさんあると思いました」
「言葉を発さない分、目や体で自分の伝えたいことを表すことを学びました」(ノ・ユンソ)
――手話のシーンもすごく自然でしたが、どのように身に着けたのでしょうか。
ホン・ギョン「手話は難しかったですね。撮影前に3か月ほど、たっぷり練習する期間がありました。新しいことを一緒に学びながら、みんなと自然に仲良くなれた。だからその時間は、撮影と同じくらい重要で大きな意味を持っていたと思います」
ノ・ユンソ「週に3~4回ほど、1回につき2時間ほど練習しました。最初は、いくらうまくなってもネイティブの方々の体の動きには及ばない部分もあって、“迷惑をかけてしまうのでは”というプレッシャーも大きかったです。でも、やってみると手話の表現自体がとてもおもしろくて。手話は非言語的表現が70%近くを占めるので、言葉を発さない分、目や体で自分の伝えたいことを表すことになります。だから演技面でも学びがあり、成長できたと感じています」
キム・ミンジュ「聴者同士の会話と手話の一番大きな違いは、互いに必ず目を合わせて会話しなければならない点。だから相手にもっと集中するようになります。それに、先ほどユンソ姉さんがおっしゃったように、非言語的な表現がとても多いので、表情などがより大きく見えてくるんです」
ホン・ギョン「ミンジュの言う通りだと思います。普段声で会話をするときは、相手と目を合わせずに、聞きながら別のことを考えたりすることもありますよね。でも手話では、それができない。相手が何を話しているのかを正確に見る必要があって、全神経を集中させる。そういう姿勢から生まれる心構えそのものが大きな学びになりました」
――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか? また、ファンの方々が知らないような素顔があれば教えてください。
ホン・ギョン「ユンソはリーダー的な存在。現場をしっかりとまとめようとするエネルギーがある。ミンジュは、いつも明るいですね。映画の撮影は、短いといえば短いし、長いといえば長い時間を一緒に過ごすのですが、そのなかで必ずしんどい瞬間がやってきます。でもミンジュは、つらくても一切顔に出さず、最初から最後までとてもプロフェッショナルにやり遂げました。その姿が本当にすごいと思いました」
ノ・ユンソ「ミンジュは、おもしろくてユーモアがあって、私が想像していたよりもずっと楽しい人でした。見た目はお姫様のように見えるのに、実際はすごくサバサバしていて、本当に気さくなんです。ホン・ギョン兄さんは……教授のような雰囲気ですね。映画学科の教授のように博識な面もありながら、時には突然おどけて見せたりも(笑)」
ホン・ギョン「あはは」
キム・ミンジュ「お二人とも本当にすてきな人だと思いました。俳優として優れているのはもちろんですが、素顔も誠実で魅力的なんです。とてもフランクに接してくださったので、私もリラックスできました。演技するときの集中力も本当にすごいと感じました」