【ネタバレあり】ゼノモーフと共闘…!?怒涛の急展開を迎えた「エイリアン:アース」第7話を徹底分析!
衝撃の展開の数々に胸のザワつきが収まらない…
そして第7話は終幕に近づく。プロディジー社の施設に潜入したモローは、あっけなく同社の大量の兵士たちに取り囲まれる。その中心にいるのはカーシュだ。シンセと呼ばれるアンドロイドの彼は『エイリアン』(79)に登場したアンドロイドのアッシュ(イアン・ホルム)と同様に、常に沈着冷静。ここでもスライトリーとスミーに謹慎を命じ、モローの身柄を確保するという手柄を立てる。エピソードを追うごとに、すべての状況を支配しているのは彼なのではないか?という予測が高まってはいたが、第7話でも彼の不気味にして強烈なカリスマ性が光った。
一方のウェンディ一行の終幕は違う意味で強烈だ。波止場でボートに乗り込もうとしたものの、こちらもプロディジー社の部隊に取り囲まれて万事休す。しかし、大事な人形を海に捨てられてキレたニブスが、第6話で示唆された狂暴性を発揮して兵士を殺したことから戦闘の火ぶたが切られる。ここでもウェンディはゼノモーフを呼ぼうとするが、もう死体を見たくないジョーは彼女の口を塞ぎ、やめさせる。ちなみに、この部隊にはラシディ(モー・バー・エル)とサイベリアン(ディエム・カミラ)という、第1~3話でジョーと行動を共にした、彼の戦友もいた。そのサイベリアンがニブスに殺されそうになった時、反射的にジョーはニブスを撃ち、機能不全に追いやる。妹分のニブスを殺した兄に、ウェンディは「なんてことしたのよ!」と怒りをぶつけ、第7話はカオスを引き起こして幕となる。
ロスト・ボーイズの運命はいかに…第8話ですべての謎は解明される?
これまで仲の良い兄妹として描かれてきたジョーとウェンディの間に生じるラストの亀裂の逸話は、あまりに重い。ジョーはヒューマニズムの見地から行動し、人が命を落とす場面を見たくないと思っている。ところが、12歳の心のままハイブリッドに転生したウェンディにはそれがない。大切なのは家族だけで、そこにはニブスら同じくハイブリッドのロスト・ボーイズも含まれているのだ。欲深い人間なんぞ生かす価値はないと、ニヒルに構えてウェンディの行動を擁護することもできるだろう。しかし、人として正しいことをしていると思えるのは、殺りくを回避したい一心でいるジョーのほうだ。このラストは観る者の道徳観を善と悪の境界線に追いこむようなもの。鑑賞後のぬぐい切れない心のザワつきの多くは、ここからきているのだ。
2つのドラマの幹以外にも気になる要素はある。ハイブリッドを作り出した天才カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)が新しいオモチャに興味を示したこと。それは捕獲した5種のエイリアンの一体である、目玉とタコ脚の小型種。円周率の小数点以下を答えられるほど高度な知能を持った、このエイリアンはヤギの体に寄生しているが、これを人間に寄生させることをカヴァリエはたくらむのだ。すべては、このエイリアンと会話をしたいという欲求から。これは、すでに意志の疎通を成し遂げているウェンディとゼノモーフの関係と対をなしてもいる。また、彼の部下であるカーシュの動向も気にしないわけにはいかない。なにぶん切れ者だけに、カヴァリエに成果を報告して終わりとはならないだろう。
いずれにしても「エイリアン:アース」は残すところ、あと1話。ウェンディとジョーの兄弟愛はどう転がるのか?森林で待機しているゼノモーフは、どうなる?生き残ったロスト・ボーイズの運命は?カーシュの最終目的はなにか?カヴァリエの野望はこの後の世界にどんな影響をあたえるのか?謎のいくつかはシーズン2に持ち越されるかもしれないが、とりあえず最終話は、このどうしようもない胸のザワつきを収めるものであってほしい。
文/相馬学