日本で唯一の参加!「エイリアン:アース」ロケ地・タイでの貴重な撮影現場潜入レポート
目指すは「ロード・オブ・ザ・リング」の撮影地、ニュージーランド
主要キャストは、シドニー・チャンドラー、アレックス・ロウザー(ジョー・ハーミット役)、サミュエル・ブレンキン(ボーイ・カヴァリエ役)らフレッシュな若手陣が中心。映画ファンにとって馴染みがあるのは、シンセティックのカーシュに扮したティモシー・オリファントだろうか。最も深みがある役柄は、バボー・シーセイが演じたUSCSSマジノ号の乗組員モローだ。宇宙で未知なる生物を捕獲するミッションに従事し65年ぶりに地球に帰還するも、最愛の娘も、孤児だった彼を拾ってくれた先代ユタニもすでに亡くなっている。しかもマジノ号が不時着したのは対立関係にあるプロディジー社領内。そこで彼はひとり、恩人ユタニに与えられた使命を全うしようとする。シーセイは自身が演じるこの役柄について、「iPhone 20の世界にいるiPhone 1のようなもの」と表現していたが、モローの孤独と苦悩はいかほどのものか、察するに余りある。
「私たちが未来の情景を考えるときアジアを思い浮かべるのはとても理に叶っている。宇宙船が墜落したレトロな未来都市としてバンコクを選んだ」と語るのは、プロデューサーのジョセフ・E・イベルティ氏だ。温暖化が進んだ未来都市を描くのにタイが最適だったというのが、ロケーションを決めた大きな理由のひとつ。だが製作者としては、同国政府が外国映画製作に対して税制優遇措置を強化していたことも大きかったという。イベルティ氏は、「本作が配信開始されれば『ロード・オブ・ザ・リング』(01〜03)がニュージーランドに与えたような影響がタイにもたらされるだろう」とも語っていた。タイの映画産業にとってもFXにとっても、「エイリアン:アース」はそれぐらい気合の入った一大プロジェクトなのだ。
2025年は“エイリアン&プレデター・イヤー”!
最終回第8話では、これまでのシリーズでは考えられないような驚くべき展開で幕を下ろす「エイリアン:アース」。第2シーズンが製作されるかどうかはまだ不明だが、回収されていない伏線、解明されていない謎はたくさんある。早く続きを観たいものだ。
特に気になっているのが、セットビジットの取材でノア・ホーリーが語った、「本作の時代設定は『エイリアン2』(86)の前後」という言葉の真意だ。彼にはその後もう一度インタビューをする機会があり、再びこれはどういう意味なのか訊いてみたが、「ストーリーテラーとしてタイム・ジャンプが正しいと感じた場合、それを行使する権利はあるが、いまのところその予定はない」と、なんとなくはぐらかされてしまった。だが、彼の頭のなかでは『エイリアン2』の時代にもまたがる壮大な構想が、実はあるのかもしれない。
そしてもう一点、本作におけるウェイランド・ユタニ社のフィーチャーっぷりも大いに気になるところ。というのも、同社は11月7日(金)公開の『プレデター:バッドランド』にも登場するからだ(エル・ファニング扮するティアは、ユタニ社製アンドロイドだ)。かつての「エイリアンVS.プレデター」シリーズ(04、07)のような、クロスオーバーの布石が着々と進行中なのか?と、期待と妄想が膨らむ。
それにしても、2022年の『プレデター:ザ・プレイ』、昨年の『エイリアン:ロムルス』に続き、『プレデター:最凶頂上決戦』「エイリアン:アース」『プレデター:バッドランド』とすべてが良作続きで、今年は“エイリアン&プレデター・イヤー”と言って差し支えないくらいの盛り上がりっぷりだ。ウェイランド・ユタニ社を通じてつながる世界観――「エイリアン」「プレデター」両シリーズが、過去作も含めて巨大なユニバースとして拡大していく未来を、楽しみに待ちたい。
取材・文/西川亮(「DVD&動画配信でーた」編集長)