スティーヴン・キングの映像化にどう挑んだ?『THE MONKEY/ザ・モンキー』監督に“Jホラーの申し子”がインタビュー
「誰もが死から逃れられないからこそ、みんなに愛情の眼差しを向けたい」
――『THE MONKEY/ザ・モンキー』では特にどのようなテーマを意識して作りましたか?
「この映画は誰もが死から逃れられないということを描いています。アリ・アスターのようにひたすら苦しい映画として作ることもできますが、もっと軽やかにダークに描こうと思いました。実際、観客に聞くと、『5日前に大事な人が亡くなったけど、この映画を観て自分のための映画だと感じた』とか『安心させてくれた』という感想をもらいました。みんないずれは死ぬ運命共同体なのだから、みんなに愛情の眼差しを向けて、病人にスープを飲ませるような気持ちで映画を作りました」
――今回は前作『ロングレッグス』のシリアスで深遠な作風からグッとトーンが変わっていて、ポップでブラックユーモアもあります。
「『ロングレックス』も、ファニーな映画だと自分では思っています。あれが上手くいったのは、みんなが楽しくやっていたからだと考えています。ニコラス(・ケイジ)も映画に対する愛情が強くて、たっぷり愛情を注入しているからこそ、魔法のような芝居が生まれました。今回もそのように取り組みました」
――本作を作るうえでレファレンスにした作品はありますか?
「インスピレーションを受けた作品としては、チェビー・チェイスが出ていた『ホリデーロード4000キロ』です。こんなのを参考にしているのかと不思議がられるんですが、父親の物語として参考にしています。それとリチャード・ドナー監督の『オーメン』の影響は大きいです。カートゥーンでいうと『バッグス・バニー』だったり『イッチー&スクラッチー』。それと『クリープショー』、『狼男アメリカン』などですね。あとはハリウッドのファミリー向けホラー、たとえば『グレムリン』や『永遠に美しく…』のようなスケール感やトーンを狙いました。ノスタルジックで、ホラーだけどコメディ、グロさもあるような。そんなラインですね」
――ホラー映画を作っていくなかでは恐怖心に向き合うことも多いと思いますが、監督にとって幽霊やモンスターなど、もっとも恐怖を感じる対象はどのようなものでしょうか?
「私にとって一番怖いのは“人”です。幽霊や悪魔やモンスターは、私の育ちにも関係するだろうけど、むしろ魅力的な存在なんです。キャラクターとして一番好きなのはダースベイダーですね。『バットマン』でもそうですが、ヴィランの方が断然魅力的だと思います。それに対して、“人”は最悪だと思います。例えばNetflixにあるような連続殺人犯のドキュメンタリーはバッドテイストで、ただでさえ日々の生活で大変なのに、こんな悪が人々の生活のなかにありうる、というのを突きつけられるのが嫌だと感じます。なので私は絶対観ません(笑)」
取材・文/近藤亮太