シリーズ大好きライターが沼った「エイリアン:アース」名場面!過去作のトリビア満載で紹介
エイリアン視点の主観映像は『エイリアン3』のオマージュ!?
船内の内装はこれくらいにして、ほかに目を移そう。第2話ではゼノモーフが、兵士の顔面をインナーマウスで貫き殺す描写があるが、これはファンには「待ってました!」なシーン。1作目の機械工ブレット(ハリー・ディーン・スタントン)やパーカー(ヤフェット・コットー)が、この手段で殺されて以来、シリーズを重ねる度に何度も見てきた場面だ。これがなければ、「エイリアン」とは言えないというくらい、絶対にあって欲しい場面なのだ!
第3話の燃えポイントは、倉庫内でエイリアンとバトルしたあとの主人公ウェンディ(シドニー・チャンドラー)に起こる異変。彼女の額から、白い液が流れてくる。第1作では、シンセと呼ばれる人造人間アッシュ(イアン・ホルム)に同様の異変が起きた。シンセとAIのハイブリッドであるウェンディの体内組織も、似たようなものなのかもしれない。ともかく白い液が出ると、それが故障のサインであることは、アッシュのてん末からも明らか。ウェンディがこのあと、意識を失うのも必然だ。
第5話は、先にも述べたとおり、マジノ号に起こった惨劇を描いているが、このエピソードの構造自体が1作目をなぞっている。船内で得体の知れない異星生物に襲撃され、次々と命を落とすクルー。一方で、エイリアンの標本を移送するというに任務に忠実なサイボーグ。この構図だけでシリーズファンとしては“ご飯十杯はいける”描写なのだが、第5話はそれにとどまらない。船内を逃げ回る女性副官ザヴェリ(リチャ・ムールジャニ)をゼノモーフが走って追ってくる場面では、エイリアン視点の主観映像も織り込まれているが、これは『エイリアン3』(92)でデヴィッド・フィンチャー監督が同様の手法を取っていたことのオマージュ!?さらいえば、ザヴェリがゼノモーフに捕まり最期を迎えるシーンでのストロボの映像も『エイリアン』での惨殺シーンとリンクする。
ちなみに第5話に付けられたサブタイトルは「In Space, No One…」。これは1979年の『エイリアン』全米公開時に付けられた宣伝用コピー「In space, no one can hear you scream」からの引用。日本公開時にも直訳の「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」というキャッチコピーが躍ったので記憶している方も多いのでは。
新鮮な驚きばかりで毎週水曜日が楽しみで仕方ない!
第6話にもファンを狂喜させる場面があった。それは、人間に寄生して胸部を突き出たチェストバスターがゼノモーフへと進化する過程。小さなヘビ程度の大きさであるチェストバスターが、次に現われた時には成体のゼノモーフになっているのはシリーズのお約束で、エイリアンが急激に成長していることを表現していた。しかし、ウェンディが度々エイリアンとの交信を試みる、この第6話ではその中間である、「半分チェストバスター、半分ゼノモーフ」の状態を見ることができるのだからうれしい。
言うまでもなく、「エイリアン:アース」には独自の展開があり、「ピーター・パン」の世界観を持ち込むなどの新鮮な驚きがある。それはすべて1作目で築かれた土壌の上に成立しているから、魅入ってしまうのだ。残る2話はどうなるかはわからないが、さらにオマージュを捧げる見せ場があってもうれしいし、リスペクトを保ちつつ別次元に突き抜ける展開もアリだ。いずれにしても、「エイリアン:アース』は最後の最後まで観ないことには収まりがつかない!
文/相馬学