【ネタバレレビュー】「エイリアン:アース」第6話で加速する、登場人物たちの不穏な動き…残り2話で“あの人物”が餌食に!?
ウェンディの成長、不審な動きを見せるカーシュ…加速していく緊張感!
まず、本作の主人公であり、アンドロイドに人間の意識や記憶が移植された“ハイブリッド“の第1号、ウェンディ(シドニー・チャンドラー)を見てみると、本エピソードの彼女は成長したのだろうか驚くほど理性的だ。第4話で明らかになった彼女だけの能力で、エイリアンとの“会話”に夢中になる子どもらしさを見せる一方で、彼らを凶暴な生き物としか捉えない兄ハーミット(アレックス・ロウザー)にエイリアン側に立った解釈を示し、島から出ようという兄の言葉には「出たくなかったら?」と切り返す。また、攻撃的になったロスト・ボーイズの一人、ニブス(リリー・ニューマーク)から、その要因だと思われる過去の記憶を消去した育ての母で科学者のデイム(エッシー・デイヴィス)を非難し、「協力して“問題”を解決しよう」という提案に対しても「あなたが問題なら?」という言葉を投げかける。
そう言われた時、大人の2人ともがたじろぎ、返す言葉を失ってしまうのは興味深い。本作での“大人”は“人間”を意味していて、理性的で感情に流されないウェンディが、大人にならない“ひとり”という解釈も可能だ。
そして、「大人になったら島にはいられない」を「“人間”になったら島にはいられない」と解釈すれば、ウェンディが、島から連れ出したいという兄に否定的だった理由にもなる。
では、ほかのロスト・ボーイズはどうだろうか。今回、大きな動きがあるのはトゥートルズ(キット・ヤング)とスライトリー(アダーシュ・ゴーラヴ)の2人。科学に興味津々のトゥートルズはカーシュ(ティモシー・オリファント)の助手のように振る舞い、頼まれたエイリアンの世話をひとりでやろうとする。ところが、目玉エイリアンに身体を乗っ取られた羊の妨害を受け悲惨な結果を招いてしまう。一方、ユタニ社のモローから家族を人質に取られ、彼にエイリアンの持ち出しを強要されているスライトリーは、ここにきて偶然からその目的を果たすことになる。ただし、その守備は穴だらけ。研究室からエイリアンが放たれてしまう結果になってしまう。
ひとりでできるという傲慢さと、家族への愛情という足かせ。いかにも人間的な感情が愚かな行動を引き起こしてしまい「島の子どもの数は変わる。殺されることもあるし」となる。この2人の言動はとても人間的。人間の脆弱さが伝わって来る。
そうなると、やはり気になるのはシンセのカーシュの存在だ。スライトリーとモローの会話を傍受しながらなんの手も打たず、トゥートルズの愚かな行動をモニタで監視していてもただ見ているだけ。果たしてそこにどういう意図が隠れているのか。彼の言動からも人間を愚かしい、カヴァリエのことさえもそう捉えていることが伝わってくるため、本作での役割が気になってしまうのだ。
最後に、第6話のタイトル「ザ・フライ」について考察してみたいと思う。SFファンなら当然、カート・ニューマンの『蠅男の恐怖』(58)やそのリメイクのデヴィッド・クローネンバーグによる『ザ・フライ』(86)を思い出すが、その由来のひとつとして考えられるのは、大きなハエのような羽根をもったエイリアンが登場するところ。ケージの天井隅に巣をつくり、そこから獲物がくると飛び出すハエのようでありハチのようでもあるエイリアンだ。もうひとつ、映画の主人公はハエと人間のDNAが混じった、いまで言うところのハイブリッドモンスターだったが、本シリーズの場合は人間の心とマシンの身体というハイブリッド。なにか意味があるのだろうか。
残るはあと2エピソード。謎は深まるばかりで明確な答えはまだない。カーシュの動きが気になって仕方ないし、ウェンディとエイリアンの関係性の答えどころかヒントすらまだない。本作は、最初の『エイリアン』の2年前という設定だが、どうやって1作目につなげるのかも大きな問題だ。いや、そもそもあと2話で完結できるのだろうか⁉シーズン2を是非ともお願いします!という気持ちになってきてしまった。
大混乱に陥っているはずのこの施設で、ウェンディはどんな活躍を見せるのか?その活躍によって彼女はどういう自分に気づくのか?もう目が離せません!
文/渡辺麻紀