原菜乃華、『不思議の国でアリスと』は「お守りみたいな作品」。『すずめの戸締り』音響監督や「おはスタ」共演小野友樹も技術を絶賛
現在公開中の劇場アニメ『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』のスペシャルトークイベント付き上映会が、9月8日に丸の内ピカデリーで開催。主人公、安曇野りせ役の原菜乃華、アリス役のマイカ ピュ、ヤマネ役の小野友樹、篠原俊哉監督、山田陽音響監督が登壇し、キャスティングやアフレコ収録の裏側を語った。
世界的名作「不思議の国のアリス」を“令和版アリス”として新しい解釈で描いた本作は、篠原監督ほか、アニメーション制作をP.A.WORKS、脚本を柿原優子、コンセプトデザインを新井清志、主題歌をSEKAI NO OWARIが担当した。
まず、原、マイカのキャスティング経緯について問われると、篠原監督は「原さんは主人公、りせと同じ年齢で共感できる部分が大きい。透明感のある声にほんの少し影を感じさせるところがあり、りせを演じるうえで大きなフックになると思った」と語った。
原は「声の表現に影があって素敵だと言っていただけたのがうれしく、自分に役を託してもらえたことで大きな自信につながった」と当時の心境を振り返った。
音響監督を務めた山田は、原との初タッグ作『すずめの戸締まり』(22)での収録を振り返り、「声優の現場ではマイク前で動けないため、服の擦れる音がしないジャージを着てもらい、動きながら声を出す特訓を3か月ほど続けた。もはや部活のような現場だった」と笑顔で語った。そのうえで「だからこそ今回キャスティングで原さんの名前が挙がったとき、『僕は原さんならすぐ行けますよ』と太鼓判を押した」と明かし、原への厚い信頼をにじませた。
原も「数年ぶりのアフレコで不安を正直に相談したが、山田さんに『絶対大丈夫』と力強く言っていただけて肩の力が抜けた」と感謝の想いを明かした。
続いてアリス役のマイカのキャスティングについて篠原監督は「なるべく作られすぎない、自然体でボーイッシュな声を探していた。マイカさんの声は少し中性的で、笑い声などネイティブさがアリスにぴったりだった」と抜擢理由を説明。マイカは「普段からおしとやかというより、外で体を動かすのが好きなので」と自身と役柄の共通点を語り、「初めての声の仕事で緊張したけれど、皆さんに優しくしていただき楽しく臨めた」と笑顔を見せた。
前回の舞台挨拶でも話題となった原と小野の「おはスタ」以来の再会について改めて触れる場面も。「会った瞬間から当時に戻ったようで、本当に幸せだった」と原が語ると、小野も「再び同じステージに立てるとは思っていなかった」と感慨深げにコメント。お互いに前回以上に気持ちが高まっている様子を見せていた。
さらに小野は、原の声の演技について「声優でなければ難しいはずの技術的な部分をすでに会得し始めていた。今作では、その力が遺憾なく発揮されていたと思う」と振り返り、「技術では練り上げられない素直な感情表現を声にのせられるのが本当に素晴らしい。実写のドラマなどで培った表現が確実に声の演技にも生きていて、りせとして大きな存在感を放っていた」と力強く称賛。マイカについても「マイカさんもストレートでやんちゃなアリスを魅力的に演じていた」と賛辞を贈った。
トークの終盤には、篠原監督と山田音響監督から原とマイカへ、それぞれのキャラクターをイメージしたカラーモチーフの花束がサプライズで贈られ、最後に1人ずつ締めの挨拶を述べた。
篠原監督は「『アリス』は原作も有名ですが、ストーリーらしいストーリーがない分、作り手が自由に様々な要素を盛り込める作品。今回は現代風にアレンジし、ネットにあふれる情報をどう自分のものにしていくかを考えながら描きました。映画のなかに答えがあるわけではありませんが、もしかしたらヒントのヒントくらいにはなるかもしれないと思っています。ぜひ楽しんでいただけたらと思います」とあふれる想いを口にする。
山田音響監督は「子どもが観ても笑って楽しめ、大人が観れば懐かしさを覚える作品だと思います。子どものころに観た映画が、大人になって観直すとまったく違った意味を持つことがあるように、この作品も10年後、20年後に就職活動の時期を迎えた時など、違った見方ができるはず。世代を超えて周りの人に勧められる映画だと思います」とアピール。
小野は「うれしい再会や親しい仲間との共演もあり、自分にとって思い出深い作品になった。出演自体はピンポイントの登場ですが、この作品に関わり再びこうしてステージに立てたことが本当にうれしい。スタッフが心血を注いで完成させた作品なので、ぜひ皆さんの心になにかを残せる1本になればうれしいです」と、マイカは「なにかしら共感できるキャラクターやシーンがあると思うので、ぜひお気に入りを探しながら楽しんでほしい」と語った。
最後に原は「去年の夏のアフレコ期間を思い出しながら楽しく話せて、とても充実した時間でした。私にとって『不思議の国でアリスと』は“お守りのような作品”。同い年のりせと同じように壁にぶつかったとき、前向きな言葉や明るい方向へ導いてくれるヒントを与えてくれる存在です。温かいスタッフ、キャストの皆さん、監督に見守られた時間も含め、とても大事な作品になりました。皆さんにとってもお守りのように大切な1本になれば」と力強く語り、観客にメッセージを贈った。
その後のフォトセッションでは、本作にも登場するハンプティダンプティの着ぐるみもサプライズ登場。登壇者の横に並ぶ愛らしい姿に会場からは笑いと歓声が沸き起こり、華やかな雰囲気のままイベントは幕を閉じた。
文/山崎伸子