少女時代クォン・ユリが語る、『侵蝕』で演じた複雑なキャラクターができるまで「撮影現場でアイドルとしての経験が役立っている」
少女時代のメンバーとしてK-POPの黄金時代を駆け抜けたクォン・ユリが、俳優としてスクリーンでかつてない姿を解き放つ。新作『侵蝕』(公開中)で彼女が挑むのは、過去の記憶を失い、孤独を抱えて生きる特殊清掃員ミン。無邪気で奔放な新しい同僚ヘヨン(イ・ソル)と暮らし始めたことをきっかけに、静かな日常は崩れ、封じていた“地獄”が顔をのぞかせる。20年を隔てた二つの物語が交錯し、人間の本質をえぐり出す本作は、釜山から世界へと衝撃を拡散し、韓国では公開初週に実写映画ランキング1位を記録した。MOVIE WALKER PRESS KOREAでは、従来のイメージを脱ぎ捨てて「挑戦してみたかった」と語るクォン・ユリに、本作に臨んだ覚悟を聞いた。
「新しい顔、新しい演技にチャレンジしてみたいと、ずっと渇望していたんです」
「展開が本当に気になって一気に読み、絶対に参加したいと強く思いました」と、初めてシナリオを手にした時のことを振り返るクォン・ユリ。普段の明るいイメージとは異なる役どころだが、むしろ自然な挑戦だったという。「多くの方々にとって、少女時代は愛と希望を届ける存在ですよね。だから、音楽でステージに立つときは、健康的でエネルギッシュな印象が強いのではないかと思います。でも、私にもミンに似た面があります。人間ですから。だから、自分のなかの“ミン的な部分”を強調して、立体的なキャラクターにできればと思いました。新しい顔、新しい演技にチャレンジしてみたいと、ずっと渇望していたんです。俳優として心からやってみたいと願っていたジャンルでもありました」
このジャンルに惹かれる背景には、幼い頃からの映画や読書の体験がある。「昔『バトル・ロワイアル』を観て衝撃を受けました。日本の有名なサスペンスの数々は、今の私の感性の源と言えるかもしれません。スペイン映画『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』や、推理小説「ミレニアム」シリーズなど、どんでん返しのある作品やサスペンスが好きなんです」
最も苦労したのは、感情を表に出さず内面に秘める演技だったと明かす。「普段から人前で感情を表現することに慣れています。音楽やバラエティで自分を表現してきたので、感情を大きく出すのは自然なことだったから。でもミンは違う。秘密めいていて、感情を積み重ねておいて、一瞬で爆発させる。その背後にしっかりとした物語がなければ虚像に見えてしまうのではないかと悩みました」
だからこそ、キム・ヨジョン、イ・ジョンチャン両監督とはミンの過去についてとことん話し合った。撮影に入る前の1か月間、共演のイ・ソルとほぼ毎日顔を合わせ、演劇の稽古のように役を磨いた。「まるで監督たちが先生で、私たちは学生。学校でグループ課題をこなすような感覚でした」と笑いながら振り返るが、その地道な準備がスクリーンの緊張感を支えている。