批評家が選ぶ、ウェス・クレイヴン監督作ランキング!ホラーファンを虜にした名物シリーズなど“フレッシュ”なおすすめ10選
手掛けた長編24本中、23本がホラー・スリラー映画!
最も高い評価を獲得したのは、いまなお“史上最高のホラー映画のひとつ”との呼び声も高い『エルム街の悪夢』の94%フレッシュ。夢のなかに現れる鋼鉄の爪を持つ殺人鬼フレディ・クルーガー(ロバート・イングランド)の悪夢に悩まされるティーンエイジャーが、果敢にも戦いに挑むストーリーであり、ジョニー・デップのデビュー作としても有名な一本だ。
およそ180万ドルの制作費ながらその10倍以上の興収をあげる大ヒットを記録し、即座にシリーズ化。2作目から6作目まで別の監督がメガホンをとった後、シリーズ7作目に当たる『エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア』でクレイヴン監督はシリーズに復帰。自らウェス・クレイヴン役を演じ『エルム街の悪夢』をリメイクしようとしたことでフレディが現れるというメタ的な展開で、こちらも76%フレッシュとなかなかの高評価を得ている。
キャリア後半の代表作といえるのは、やはり青春スラッシャー映画の代名詞として絶大な人気を誇る「スクリーム」シリーズ。クレイヴン監督は1作目から4作目までメガホンをとり、そのなかで高い評価を得ているのは83%フレッシュの『スクリーム2』と、77%フレッシュの『スクリーム』。ちなみに観客からの評価が高いのは1作目のほうで、3作目は酷評が集中。4作目は凡庸な評価に終わっている。
3作目から10年経って製作された4作目は当初3部作となる予定だったものの、興行的に不発だったことや脚本作業の難航が重なり実現には至らず。結局テレビシリーズのシーズン1が最終回を迎える直前にクレイヴン監督が死去。もし5作目6作目が作られていたら…というファンの願いは、その7年後にスタートしたマット・ベティネッリ=オルピン&タイラー・ジレット監督によるリブート兼続編シリーズによって、理想的なかたちで実現された。
カルト的人気を誇り、2000年代にリメイクもされた初期の2作『鮮血の美学』と『サランドラ』はそれぞれ64%フレッシュと68%フレッシュでリスト入り。長編監督デビュー作だった『鮮血の美学』は、公開当時に抗議活動が起こるなど大論争を巻き起こしたことでも知られる問題作。クレイヴン監督はその後、ホラー以外の作品を手掛けようとしたのだが資金が集まらず、ふたたびホラーに挑んだ『サランドラ』が成功。本格的にホラー監督としてのキャリアを歩みはじめることとなった。
その結果、フィルモグラフィのほとんどがホラーかスリラー作品で、非ホラージャンルの作品は2本のみ。「スクリーム」シリーズの成功の後、ワインスタイン兄弟からチャンスをもらって自身の集大成のつもりで挑んだ『ミュージック・オブ・ハート』がそのひとつで、63%フレッシュというまずまずの評価。メリル・ストリープ演じる主人公がハーレムにある小学校の臨時教師となり、子どもたちに音楽のすばらしさを伝えていく。クレイヴン監督のクラシック音楽愛が込められた佳作であり、ホラーだけの監督ではないと証明した。
もう1本は短編作品のためリストから除外したが、世界各国の名だたる監督たちが集結したオムニバス映画『パリ、ジュテーム』(06)の一編「ペール・ラシェーズ墓地」。墓地でケンカしたカップルの前に、オスカー・ワイルドの幽霊が現れるという内容で、子どもの頃に墓地の隣に住んでいたというクレイヴン監督らしいロケーションに、アクセントとして幽霊というホラー要素が加わる。こちらも一見の価値がある作品だ。
文/久保田 和馬