【ネタバレあり】1作目へのリスペクト満載で描かれる“マジノ号の惨劇”…「エイリアン:アース」第5話レビュー

【ネタバレあり】1作目へのリスペクト満載で描かれる“マジノ号の惨劇”…「エイリアン:アース」第5話レビュー

エイリアン」初のドラマシリーズ「エイリアン:アース』(全8話)がディズニープラス「スター」で独占配信中だ。地球を舞台にエイリアンの恐怖を描く本作は、映画・ドラマの批評集計サイト「Rotten Tomatoes」で『エイリアン』(93%)、『エイリアン2』(94%)を超え、シリーズ最高となる批評家スコア95%フレッシュ(9月4日時点)を獲得した注目作。今回は、後半戦に突入しクライマックスの布石として重要な意味を持つ、第5話のレビューをお送りする。

※以降、「エイリアン:アース」第5話のネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。

エピソードタイトルから展開まで…『エイリアン』1作目とのリンクが熱い

ニューサイアムへ墜落したマジノ号の唯一の生存者、モロー
ニューサイアムへ墜落したマジノ号の唯一の生存者、モロー[c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

捕獲したエイリアンを積んで帰還した深宇宙船マジノ号の、プロディジー社市街地への墜落で幕を開けた本作。多くの死傷者を出した大惨事の裏側を描いた第5話は、ウェンディ(シドニー・チャンドラー)をはじめ地球のレギュラー陣が登場しないという、第1話の前日譚の位置づけだ。まずはドラマの前提となる時代背景を復習しておこう。物語の舞台は2120年。この時代は国や政府という枠組みは崩壊し、世界はファイブと呼ばれる5つの巨大企業「ウェイランド・ユタニ」「プロディジー」「リンチ」「ダイナミック」「スレッショルド」が統治していた。各社は競うように不老不死の研究を進めており、ウェイランド・ユタニはその一環として異星生物の収集を行っていた。マジノ号が捕獲したのはエイリアンほか5種の異星生物。65年に及ぶ旅を終え、地球到着まで17日に迫ったマジノ号での彼らとクルーの攻防戦がスリリングに描かれる。

否応なく『エイリアン』を彷彿させるマジノ号船内の様子
否応なく『エイリアン』を彷彿させるマジノ号船内の様子[c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

『エイリアン』で登場したノストロモ号のデザインと酷似している
『エイリアン』で登場したノストロモ号のデザインと酷似している[c]Everett Collection/AFLO

まず注目したいのは「宇宙では誰にも…」というサブタイトルだ。原題は「In Space, No One…」で、これはシリーズ第1作『エイリアン』のキャッチコピー「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない…(In space no one can hear you scream)」へのオマージュ。逃げ場のない船内でクルーがエイリアンに襲われていく展開は、タイトル通り『エイリアン』に準じている。監督は本作のショーランナーを務めるノア・ホーリーで、第1話に続く2本目の監督作。第1作の熱烈なファンである彼が手掛けた本エピソードは、ノア・ホーリー版『エイリアン』と言ってよいだろう。

フェイハガーに襲われた船長に代わり、マジノ号の指揮を執ることになるゾーヤ・サヴェリ
フェイハガーに襲われた船長に代わり、マジノ号の指揮を執ることになるゾーヤ・サヴェリ[c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

サヴェリはリプリーを彷彿させる(写真は『エイリアン』より)
サヴェリはリプリーを彷彿させる(写真は『エイリアン』より)[c]Everett Collection/AFLO

物語は標本室で起きた謎の火災で幕を開ける。これによりマジノ号の航行システムが破損したうえ、2体のフェイスハガーが脱走。船長ら2人のクルーに取りついてしまう。8本の細い脚で宿主の顔に張り付いたおなじみのビジュアルだが、犠牲者が2人並んでベッドに横たわる姿は新鮮だ。この事態を受け、船長代理になるのが女性航海士ゾーヤ・サヴェリ(リチャ・ムールジャニ)。やや堅めな性格を含めシリーズの主人公的存在であるシガニー・ウィーバーが演じたリプリーを彷彿とさせるキャラクターだ。彼女を含め船内には研究者や医師、機関士ほか個性の強いメンバーがそろっているのも、第1作の惨劇の舞台となったノストロモ号と同じ。サヴェリが女性であるために、周囲からややなめられているのも同様だ。


異星生物からクルーを助けようと奔走するドクター・ラヒム
異星生物からクルーを助けようと奔走するドクター・ラヒム[c] 2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

クルーが多彩な人種で構成されているのは国という概念を失った未来社会を反映しているが、サヴェリや船医などインド系が目立つのいまの時代リアルに映る。ただしサヴェリは人間的な弱さを持ち、次々に起こるトラブルによって追い詰められていく。このあたりの人物造形は、強い女性の象徴だったリプリーよりリアリティを持っている。人物相関を含め、第1話にさりげなく伏線が敷かれているので、5話を観た後に初回を観なおすのも一興だ。

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