『あなたが眠る間』で12年ぶりに長編映画を監督 韓国の名匠チャン・ユニョン日本独占インタビュー
チュ・ジャヒョンとイ・ムセンが共演するラブストーリー『あなたが眠る間』(9月5日公開)から日本独占のチャン・ユニョン監督インタビューと新場面写真、さらに入場者プレゼント情報が解禁された。
一見幸せそうに見える1組の夫婦。しかし妻は大切な記憶を失っており、夫は大きな秘密を抱えていた。愛した夫の“真実”を追い求める妻を演じるのは、ドラマ「シスターズ」「グリーン・マザーズ・クラブ」などで印象深い演技を見せたチュ・ジャヒョン。そして、ドラマ「夫婦の世界」「支配種」ほか多くの作品で人気の高いイ・ムセンが、謎めいた雰囲気を漂わせながら優しく妻に寄り添う夫を好演している。
監督を務めたチャン・ユニョンは1997年に初監督作『接続 ザ・コンタクト』が本国で大ヒットを記録し、2本目のサスペンス・スリラー『カル』(99)で世界的注目を集めた観光映画界の名匠。12年ぶりの長編映画となる本作は、ラブストーリーの佇まいから物語はミステリアスに展開。しだいに深まる疑惑とラストに待ち受けるどんでん返しで観るものの心を掴む。愛する人のために自分は何ができるのかを問いかけた本作は、アジア各国で高い評価を受けた。そんなユニョンのインタビューをお届けしよう。
Q.「あなたが眠る間」を制作した経緯を教えてください
「この作品は、かなり前に中国市場への進出を視野に入れて企画したものでしたが、なかなか機会に恵まれず、そのまま眠らせていた企画でした。そんななか、新型コロナのパンデミックが起こり、映画館は閉鎖され、映画制作も中断せざるを得ない危機に見舞われました。映画界全体が絶望的な状況に陥ったのです。いつまでこの状況が続くのか分からず、不安ばかりが募る時期でした。しかし、なにもせず待ち続けるわけにはいかず、ちょうどその頃、低予算でも映画を作れるチャンスが巡ってきました。そこで低予算に適した企画を探すうちに、長らく忘れていたこの作品を思いだし、何度も修正を重ねながら進めることになったのです。とはいえ、コロナ禍で制作を行うというのは決して容易な選択ではありませんでした。それでも、チュ・ジャヨンさんとイ・ムセンさんが制作の趣旨に賛同してくださり、スタッフたちも積極的に参加してくれたおかげで、奇跡的に完成へとこぎ着けることができました」
Q.チュ・ジャヨン、イ・ムセンのキャスティングについて
「正直、この映画は厳しい時期と環境の中で作られた作品だったため、大きな期待はしていませんでした。映画館が閉まったいたあの時期に映画を作るということは、どの俳優にとってもリスクを伴うことでしたからね。けれども、私はチュ・ジャヨンさんが映画に特別な愛情を持っていることを知っていましたし、彼女の演技力に感嘆していました。そこで思い切って脚本をお渡ししたのです。すると予想に反して、チュ・ジャヨンさんは一切ためらうことなく出演を決めてくださり、それが私や制作陣にとって大きな励みとなりました。絶望的な状況の中で彼女の参加はこの映画が完成に至るまでの最大の原動力でした。そしてさらにイ・ムセンさんのキャスティングも決まり、不可能に思えた映画制作が奇跡のように実現したのです。いまでもなお、全力を尽くしてくれた二人の俳優とスタッフたちに深く感謝しています」
Q.12年ぶりの長編監督作品ですね。観客は待望の新作となりましたが、12年前の制作時と比べて、韓国映画界において、変わったと感じたことはありますか?
「これまで私は中国映画の制作や4Dシネマの実験などを通じて、韓国映画産業の拡大について模索を重ねててきました。そんななか、不意に訪れたコロナ禍は大きな衝撃でした。しかもその影響が完全に収まる前に、今度はグローバルOTTが韓国のコンテンツ市場に大きな変化をもたらしたのです。最も大きく変わった点は、観客の期待がグローバルな基準にまで成長したという点です。つまり、映画を含むコンテンツ企画の水準は、もはや国内にとどまっていてはならない、ということでもあります。いまだ劇場の状況はコロナ以前には程遠く、制作環境はむしろ厳しくなり、市場のハードルも高くなっていますが、いまこそ新しい突破口が必要だと感じています。若い世代との積極的な対話や、海外各国のクリエイターと協力し、新しい題材や視点を取り入れたグローバルなコンテンツを生みだす努力が求められていると思います」
Q.日本の観客へ本作のどこに注目して欲しいですか?
「この映画は、徹底的に俳優を中心に作り上げた作品です。できる限り俳優たちの演技を自然に映しだし、演出の介入を最小限に抑えるよう心掛けました。とりわけ、チュ・ジャヒョンさんとイ・ムセンさんの演技に注目してご覧いただければと思います」
Q.最後に日本の観客へメッセージをお願いします
「韓国映画を愛してくださる観客の皆さまに感謝します。映画館がいまだ危機から抜けだせていない状況において、いまこそ日韓間の映画協力が切実に求められています。これからも両国の映画交流がより活発になるよう尽力しますので、引き続きご期待ください」
韓国を代表するキャスト、監督が驚きと感動を紡いでいく本作。その全貌はスクリーンで確認してほしい。
文/スズキヒロシ