北米で口コミが拡大中!「バイオハザード」リブートに抜擢されたホラー界の新鋭が放つ『Weapons』とは?

コラム

北米で口コミが拡大中!「バイオハザード」リブートに抜擢されたホラー界の新鋭が放つ『Weapons』とは?

フィンチャー直伝のスタイリッシュさと斬新な構成に注目!

興行的な成功もさることながら、肝心の作品評価はどうなのか。批評集積サイト「ロッテン・トマト」を参照すると、批評家からの好意的評価の割合は94%、観客からの好意的評価の割合は86%。どちらも『罪人たち』には及ばないものの、批評家から軽視されることも多く観客のあいだで賛否両論が巻き起こりやすいホラージャンルとしては異例の高評価といえよう。

卓越した映像表現と織り交ぜられるユーモアで、批評家からも絶賛の声!
卓越した映像表現と織り交ぜられるユーモアで、批評家からも絶賛の声![c]Everett Collection/AFLO

劇場の出口調査で集計される「Cinemascore」では「A-」を獲得。これは「死霊館」シリーズや「クワイエット・プレイス」シリーズなど、近年を代表するホラータイトルと肩を並べる高評価だ。一部ではアカデミー賞レース参戦を期待する声も強まっており、同配給会社、同ジャンルで有力候補と見られている『罪人たち』を揺るがす存在との呼び声も目立ちはじめている。

作品評価の面で特に興味深いのは、スラッシャー描写などのホラー表現が含まれながらも、意外にも「笑えた」という感想が多く上がっている点だ。典型的なコメディ映画ではないし、ホラーとコメディを両立させたホラーコメディでもないが、“ホラーとコメディは紙一重”という言葉を地で行くような表現は、もともとコメディ作品を手掛けていたクレッガー監督の得意スタイル。「Slash Film」の批評家ライアン・スコットは「暗闇のなかに差し込む歪んだ光」と、そのユーモア性を高く評価している。

メガホンをとったのはホラー映画界の新鋭ザック・クレッガー監督
メガホンをとったのはホラー映画界の新鋭ザック・クレッガー監督[c]Everett Collection/AFLO

また、特徴的な作品の構成にも注目が集まっている。本作はジャスティンやアーチャーなど、複数の登場人物の視点からそれぞれの物語が非線形かつ小説的に展開し、それらが一つに収束するという“グランド・ホテル形式”を採用。それについてクレッガー監督は「Variety」のインタビューのなかで、「このアイデアはかなり早い段階からあり、“決して後戻りをしない”というルールを自分のなかで設けていた。それを貫ければ、映画はより良いものになる」と明かしている。

その構成がポール・トーマス・アンダーソン監督の傑作『マグノリア』(99)と似ているとも言われているが、クレッガー監督はそれを否定。「構成面で踏襲しているのではなく、あくまでも参照点として『マグノリア』を取り入れました」と、同作の中盤でジョン・C・ライリー演じる警官が不審な人物を追う途中で拳銃を失くし、大雨のなかでそれを探すシーンの空気感が作品づくりの基軸になっていると告白。ちなみに本作の劇中でオールデン・エアエンライク演じる警官のポールが口髭を生やしているのも、『マグノリア』のライリーのオマージュであるようだ。

俳優出身でコメディを得意としていたクレッガー監督。その際がホラーに活かされている
俳優出身でコメディを得意としていたクレッガー監督。その際がホラーに活かされている[c]Everett Collection/AFLO

さらにそのインタビューのなかでは、作品づくりの過程でデヴィッド・フィンチャー監督からサポートを受けていたことも明かしている。「準備段階から、いつも僕の相談に乗ってくれます。編集作業でも建設的な意見をたくさんくれて、彼は僕の視野を広げてくれる存在。とても刺激的で、主に技術的な部分で多くのことを学びました」と、フィンチャー直伝のスリラー表現が本作によりスタイリッシュな魅力を与えていることが窺える。

そして続編の構想について訊ねられると、「この世界を舞台に、ちょっとだけワクワクするアイデアがもう一つあります」と語りながらも、「いまのところ、それをやる予定はありませんし、次の映画(「バイオハザード」のリブート新作)の後にもやらないつもりです」と、あくまでも『Weapons』一本で完成されていることをアピール。現時点ではまだ日本上陸の予定がない『Weapons』。『罪人たち』のように緊急公開の可能性も捨てきれないだけに、こまめに情報をチェックしておこう。


文/久保田 和馬

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