竹野内豊、玉木宏、奥平大兼らが体現する命のドラマ…『雪風 YUKIKAZE』は中心となる3人の乗員が熱い
早瀬のまっすぐな想いに触れ、内面に変化が起こっていく寺澤の再生の物語
妻子がいる身でありながら、いつ死んでもいいと思っている艦長の寺澤と、乗員全員の命を守ることに全力を懸ける先任伍長の早瀬。当初、「仲間の救助は大事だが、判断を誤るな」と苦言を呈していた寺澤が、いくつもの戦いを経て、早瀬のまっすぐな想いに触れるうちに、その内面に変化が起こっていく過程に注目してほしい。本作は寺澤一利という一人の男の“再生の物語”でもあるのだ。
もともと人間の命の重さ、尊さの意味を知っているという点では、寺澤も早瀬と一緒。それゆえに、すでに軍事的敗北が明らかになっていた太平洋戦争の末期、日本軍が組織的におこなった“特攻”という作戦について、寺澤が静かに語るシーンが胸を打つ。
誰かが生死を懸けてつないでくれた命を、彼らから託された未来を、今度はいまを生きる自分たちがつないでいくというメッセージが込められた『雪風 YUKIKAZE』。戦争体験を持たない世代が増えると同時に、戦争が身近になりつつあることを多くの人が感じ取っている現代だからこそ、この物語は、私たちが過去と向き合い、戦争について考えるきっかけになるに違いない。
文/石塚圭子
作品情報へ