『不思議の国でアリスと』タイパ命の白ウサギに、美容インフルエンサー青虫…令和の“いま”っぽいキャラクター像に迫る!
1865年にルイス・キャロルが生みだし、いまもなお世界中で読み継がれる名作を、日本で初めて劇場アニメーション化した『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』が8月29日(金)より公開される。このたび、令和の感性でアップデートされたキャラクターのなかから、アリス、白ウサギ、青虫の3キャラクターにフィーチャーし、キャラクター設定画が解禁された。
アニメーション制作を手掛けるのは「SHIROBAKO」「花咲くいろは」「スキップとローファー」など、丁寧な心情描写と圧倒的な映像美で知られるP.A.WORKS。本作では、「ファイナルファンタジー」シリーズなど多くの作品に携わってきたアートディレクターの新井清志が設立したアートスタジオ「レッドハウス」がキャラクター原案およびコンセプトアートとして参加。映像とビジュアルデザインという両輪で、現代の感性を取り入れた新しいアリス像を創出する。
この2つのクリエイティブスタジオの協業により生まれたのが、視覚表現だけでなく、キャラクターの在り方や物語のテーマにも令和的な視点を取り入れた、日本発の“いまっぽい”アリスの世界。誰もが知る「不思議の国のアリス」の世界観を大胆に再構築し、SNS時代の生きづらさや焦りといった感覚を内包したキャラクターたちが登場する。奇妙でありながらどこかリアル。そんないまの時代に寄り添う存在として描かれているのも本作の魅力の一つだ。
原作の主人公、アリスもまた、本作ならではの感性で再構築されたキャラクターの一人。クラシックな原作の魅力を大切にしつつ、現代の感覚に馴染むよう細部まで慎重にデザインされた。キャラクター原案を担当は、「“ファンシーだけどファンタジーではない”という感覚は、制作チームで共通認識として大切にしていました」と説明。
「アニメーションになった時、アリスであることをどう形にするかが一番の難題で、みんなで何度もああでもない、こうでもないと話し合いを重ねました。その結果がいまのデザインに落とし込まれたのだと思います」と振り返り、誰もが知るキャラクターだからこそ、そのらしさを保ちつつ新しさを表現する難しさと工夫がにじみ出ている。
原作でも印象的な存在である白ウサギは、現代風に“タイパ重視”な性格へとアレンジされている。担当は、「不思議世界を象徴する存在なので、原作のイメージから変えすぎないことを意識しました」としながらも、「我々もお世話になっているガジェットを使いこなしているように見せかけて、実は依存している。そんなアンバランスさを、少し狂った感じの目のデザインで表現しました」と語っている。忙しくなにかに追われるように生きる現代人の姿が、白ウサギのビジュアルに重ね合わされているようだ。
原作でタバコをふかしていたことで知られる青虫は、今作では美容にこだわるインフルエンサーとして登場。担当は、「タバコの煙に代わる表現として、加湿器の蒸気を使ってみてはどうかと提案しました。姿が見えなくなるほど加湿器を焚いている設定です。“煙つながり”ですね」と語り、さらに「胴体のフォルムはチョココルネをイメージしています」と、遊び心あふれるディテールについても明かしている。情報や承認欲求に振り回されやすい現代の空気感を反映したキャラクターになった。
まるでどこかにいそうな、だけどどこにもいな。そんないまっぽいキャラクターたちが暮らすワンダーランドは、不思議でちょっとおかしくて、どこかリアルだ。ほかにも個性豊かなキャラクターたちが登場するので、引き続きチェックしてほしい。
文/山崎伸子