菅野美穂、『近畿地方のある場所について』の赤楚衛二の新境地に惚れ惚れ「それだけでも価値がある」赤楚は「呪われていたと思う」と笑顔
発行部数累計70万部を突破した背筋によるホラー小説を映画化した『近畿地方のある場所について』の初日舞台挨拶が8月8日に丸の内ピカデリーで行われ、ダブル主演を務めた菅野美穂と赤楚衛二、白石晃士監督が出席した。
突然行方不明となったオカルト雑誌の編集長。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー事件、都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件や怪現象の数々。彼の行方を捜す同僚の編集部員、小沢悠生(赤楚)はオカルトライターの瀬野千紘(菅野)とともに行方を捜すうちに、それらの謎が“近畿地方のある場所”へとつながっていることに気が付く。
恐ろしい映画が終了した、上映後の会場に姿を現した登壇者陣。白石監督が「いかがでしたか?」と呼びかけると、大きな拍手が沸き起こった。菅野は「ホラー映画はすごく好きで、演じるうえでも他のジャンルではない表現ができる。今回も楽しみにしていた」という。「今回は久しぶりのホラー作品で、白石監督と赤楚さんとご一緒できたことが幸運でした」と笑顔を見せた。赤楚は「現場でもすごくエネルギーを使うことが多い現場だった。そのエネルギーを感じて、楽しんでいただけたら」とメッセージ。まだ恐ろしさの余韻が残っている様子の観客を前に、菅野が「ヘーイ、ヘイヘイ、ヘーイ、ヘイ!」と「学園天国」でコールアンドレスポンスを求める場面もあった。元気な反応があると、菅野は「大丈夫だ!」と喜び、会場の笑いと拍手を誘っていた。
小沢役の赤楚は、編集部員として地下の資料室にいることが多かったとのこと。「資料室が地下。撮影もずっと地下なんです。陰鬱とした空間のなか、体が重くなってきて、呪われてしまう」と小沢に降りかかる展開について吐露。「呪われたことがないので、どうやって演じようかと。この作品の一番の悩みポイントでもありました。監督が見本を見せてくださって、バチッとイメージがフィットしました」と白石監督の演出にお礼を述べた。司会から「人間にできないような動き」と表現されると、赤楚は「呪われていたんだと思います」と笑顔。そのシーンの赤楚の演技を見た菅野は、「スタッフさんが『いままでにない赤楚さんの表情が撮れました』と言っていて。私も、こういう赤楚さんはいままでに見たことがないなと思った。それだけでも、この映画の価値があるんじゃないかと思う」と力を込めた。白石監督も「自分のイメージのこととかなにも考えずに、思い切りやってくれた。ここまでやっていただけるんだと、本当にうれしい限りでした」と大絶賛だった。
怖いシーンや感情を爆発させるシーンなど、ホラー作品ならではの演技にトライした2人。菅野は「躊躇はカメラに映ると思うので、振り切る。フルスイングで。大谷翔平!みたいな感じ」と心がけていることを語り、「こういった演技でないと、瞬発力が養われない部分もある。すごく勉強になる場」と役者としても貴重な経験になるとしみじみ。「瞬発力が大事」と大きくうなずいた赤楚も、「(恐怖描写のシーンでは)息遣いが荒くなる。終わった後に、頭がぼーっとする。酸欠になります」と全身全霊の撮影を振り返っていた。
またステージでは、菅野と赤楚がジェスチャーで「一番怖かったシーン」を表現するひと幕もあった。赤楚は“笑顔で両手を振る”というジェスチャーをしつつ、「衝撃の瞬間ですよね。えっ!まさかの!という感じ。怖かったです」と証言。
菅野は虚な目で両手をあげながら、「あそこのシーンは、本物の心霊スポット。トンネルで有名な場所。真に迫るような場所」と裏話を口にし、「私と赤楚さんは見えなかったんですが、『緑の人がずっといる』と言っている子がいた」と実際になにかを見てしまった人もいるのだとか。赤楚も「カメラマンさんがシーバーをつけいて。『ちょいちょい女の人の声が聴こえてくる』と言っていました」と恐ろしい話を重ね、会場をゾッとさせていた。
もっと会場を冷やすべく、怖い話を求められた赤楚が「小学生のころ、芋虫を育てていて。どんな蝶々になるかなと大事に育てていた。そうしたら蛾でした」、菅野も「霊感がある方は、未知なるものがいるところでは、音が聴こえたり、生臭い匂いがするという。ここ何日か、家から生臭い匂いがする。酷暑で排水溝の水がなくなって、下水の匂いが部屋に戻ってきただけでした」とそれぞれ生活に密着したトークで、怖がらせるよりも笑わせてしまった2人。最後には、赤楚が「皆様に恐怖をお届けするというのも、なかなかできないこと。貴重な経験をさせていただいた」と改めて感謝。菅野は「背筋を涼しくして、暑い夏を乗り切っていただける映画になりました」、白石監督は「さかのぼると『どうだったのかな』という気持ちになる映画。2度、3度と楽しんでいただけたら」とアピールし、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝