終戦から80年…『雪風 YUKIKAZE』を親子で鑑賞することで、なにを感じた?「家族の大切さをより感じられた」「いまの時代に感謝し生きてほしい」
戦場で“戦い”ながらも、多くの命を“救い”続けた「雪風」の偉業
激闘を繰り広げる戦艦を舞台にしたアクション大作は数多くあれど、「雪風」のように戦いながら、たくさんの人を助けた駆逐艦の存在は、あまり知られていない。ちなみに「雪風」について「知っていた」という回答した方は、親世代では約20%で、子世代では約5%しかいなかった。だからこそ、「雪風」の存在を知ることができたこともとても意義深いという感想が多く寄せられている。
「『お国のために命を捧げること』が最も尊いと教え込まれていた時代に、1人でも多くの人命を救うことを続けていた駆逐艦があったこと、その人々の想いに心を打たれたました」(50代・親世代)
「迫力がありました。船の上に手だけで引き上げていく姿は感動しました」(80代・親世代)
「過酷な海戦をくぐり抜けた船があったことが信じられません。どんな時も諦めず最善を尽くすことの大切さを感じられた」(40代・親世代)
「戦時中は命を国に捧げるイメージがあったけど、ちゃんと国のために若い人を助けるのが印象的だった」(20代・子世代)
「雪風の存在を知らなかった。戦後もっと語り継がれてよいと思いました」(30代・子世代)
本作の公開日は、8月15日(金)の終戦記念日となるが、10代の子ども世代からも「戦争について少しの知識しかないが、戦前・戦後についてもっと学びたいと思った」(10代・子世代) 、「生きることの重要さ、つながることの重要さを学ぶことができました」(10代・子世代)と、本作のメッセージを受け取った様子であった。
決して忘れてはいけないものを、いま一度思い出させてくれる作品
戦後80年にふさわしい物語となっている本作を、親子で観ることができてよかったという声が多かったことも非常に印象深かった。「戦争世代ではない親子で、改めて忘れてはいけない出来事を追体験出来た」(40代・親世代)という意見が物語るように、鑑賞後、映画について様々な意見を交わし合い、共に平和の大切さをかみしめられたことが、とてもいい経験になったようだ。
「20歳の長女に終戦80年についていろいろ考え、一緒に平和について話し合えた。戦争へ行って生きて帰ってくれた亡き祖父へ改めて感謝の気持ちを持てた」(50代・親世代)
「子から孫へと伝えていくべきこと。いまの時代に感謝し生きてほしい」(50代・親世代)
「これまで海外の生活が長く、日本の戦争映画を観る機会があまりなかったので、雪風のように個人の描写が細かい映画を観ることで戦争が身近になり、他人事にはならず考えていくことができると思いました」(女性・50代親)
「家族、命の大切さについて母と共に感動できた」(10代・子世代)
「家族がいることのありがたさ、家族の大切さを近くにいることでより感じられた」(10代・子世代)
「1人で観てもとてもいいと思うが、親子で観ることで戦争を親子で話し合うと共に、風化させないためにもいいと思う」(20代・子世代)
さらに、戦争中だけではなく、戦後の日本も地続きで描いていくという構成が秀逸。1970年の日本初となった万国博覧会「大阪万博」のシーンが登場するが、折しも2025年のいま、大阪・関西万博が開催中で、大勢の観光客に賑わっている。劇中のモノローグで「大阪万博から10年後…」と、ある出来事が語られるというくだりがあるが、「過去の出来事が未来へとつながっていると感じた」(10代・子世代)、「戦争のない現在の日本でも、『生きる』ことの尊さは変わらない。いまを生きる私たちにも普遍的なメッセージが込められていると思いました」(50代・親世代)という感想が入っていたのも実に感慨深い。
まさに、本作は幅広い世代に向けて、反戦メッセージだけではなく、人と人との絆や、人を通して受け継がれていく熱い想いなど、時代を経ても決して忘れてはいけないものを、いま一度思い出させてくれる作品となっている。ぜひ、たくさんの方々に観ていただき、劇場を出たあと、大いに語り合っていただきたい。
文/山崎伸子