【ネタバレなし】海外レビューでシリーズ最高評価を獲得!「エイリアン:アース」第1話レビュー
新たなヒロイン誕生に、ドラマパートへの期待が高まる
男社会で活躍するヒロインの姿を描き、女性映画としても高い評価を浴びてきた「エイリアン」シリーズ。シガニー・ウィーバー演じるリプリーや、ケイリー・スピーニー演じる『ロムルス』のレインも記憶に新しいが、本作の主人公はハイブリッドのウェンディだ。『エイリアン4』(97)にもウィノナ・ライダー演じるアンドロイドのアナリーが登場したが、人造人間が主人公になるのはシリーズ初のことである。
ハイブリッドは人工のボディに人間の意識や記憶がそのまま転送されているが、ウェンディはまだ12歳。難病を患っていた彼女はハイブリッドの第1号に選ばれた。子どものままの大人――ウェンディの名前が指すとおり、彼女のモチーフは「ピーターパン」である。ハイブリッドを開発したのは5大企業の最後発プロディジーで、彼女に目を付けたCEOでエキセントリックな天才科学者カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)は、さしずめピーターパンということになるのか?劇中には彼が原作を朗読する姿が挿入され、意識を転送する手術台の天井のモニタにはディズニーアニメ『ピーターパン』(53)が映しだされる徹底ぶりだ。
ハイブリッドでポイントになるのが、彼らが感情を持たないこと。有機的なボディは感情をつかさどるホルモンが省かれているので、ウェンディは笑顔を見せても、楽しいと感じることがないのだ。そんな彼女にはハーミット(アレックス・ローサー)という兄がおり、同じプロディジーの軍事部門の医療班に勤めている。1話ではハーミットの存在によって、ウェンディの感情に変化が生まれる兆しが描かれており、アンドロイドは心を持つのかという「ピノキオ」にも通じる展開に発展していきそうだ。
そんなウェンディを演じているのは、『ドント・ウォーリー・ダーリン』(22)で出番は少ないながらも存在感を見せつけたシドニー・チャンドラー。美しさとあどけなさが共存した雰囲気に、目が釘付けになってしまった。思春期を飛ばして大人になった彼女を、どんな通過儀礼が待っているのかも気になるところ。『ロムルス』でもヒロインの心の成長が描かれたが、それとも違う新たなヒロイン誕生のドラマにも期待したい。
1つのシリーズでありながら、リドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、ジャン=ピエール・ジュネ、そしてフェデ・アルバレスと個性派クリエイターが独自の世界を築き上げてきた「エイリアン」。シリーズ初のドラマシリーズで、「レギオン」「FARGO/ファーゴ」など秀作ドラマを手掛けてきたノア・ホーリーがどんな「エイリアン」ワールドを見せてくれるのか今後の展開が楽しみだ。
文/神武団四郎