アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第41回 病室

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アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第41回 病室

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第41回は都筑が感じる違和感の正体とは!?

「中止!!?吉崎さん、いったい何があったんですか、、!?」
「いいから止めろ!異変を確認したんだ!!」
「くそっっっ!!総員攻撃中止!中止だ、退避!!」

喉から搾り上げた都築の声は、無情にも『EZ DO DANCE』の笑い声にかき消された。大慌てて駆け寄り、身を投げ出して食い止めようと試みた。しかし懸命に伸ばした手は数十センチ届かず、大きく振りかぶった3人の拳が怪物の胴体に深くめり込んだ。白い閃光が見えた。地面も空も、ありとあらゆるものが光に飲み込まれ、次に衝撃波を、感じた気がした。都築の視界は、一転して闇に覆われた。目を開けた都築が目にしたのは、無機質な蛍光灯と白いカーテンだった。口の中がチリチリと痛い。異常な喉の渇きで、ある程度の時間が経過している事が読み取れた。疲労なのか怪我をしたのか、身体は鉛のように重く、動かない。窓から差し込む光の加減で、夕方に差し掛かろうとしている時間帯ということが分かる。唯一動きそうな首を左に倒し、外を眺めた。ここは10階以上の高さなのだろう、すぐそばに都庁と高層ビル群が見え、自分は西新宿の病院にいるのだと認識し、同時に背筋が凍った。光に包まれ、衝撃波のようなものを全身で浴びた迄は覚えている。何かしらの怪我を負ったのだろう。しかし防衛省敷地内には最新機能を備えた病院施設があり、医者も常駐している。だがその病室ではなく、自分は西新宿まで運ばれてきた。それは防衛省が、あの周辺一体が、何かしら大きな被害を受けたことを表しているのではないか。力を入れると体を起こすことはできそうだった。しかしまるで肉体が一本の棒になったかのように硬く、腰を曲げるときにはミシミシと嫌な音を立てた。腰を起こしてみて把握出来たのは一人部屋の病室だということ。他に壁掛け時計も確認でき、17時30分であった。チューブが二本、右腕に刺さっており、計器がピッピッと小さく鳴っていた。

「・・ずをください・・・ 水をもらえますか?」

声を出すも喉が張り付いているように狭まり、うまく喋ることが出来ない。
ベッド横の柵にナースコールがあるのを見つけ、震える指で押し込んだ。

「都筑さん入りますね〜」

30代くらいの、少し派手目な看護師が入ってきた。計器に目を通し、脈拍や点滴をチェックすると「うん良かった」とうなずいた。気を失っている間にも時折飲ませてくれていたのであろう、横のデスクから吸い飲みを取って都築の口に入れてくれた。

「ありがとうございます。職員は・・防衛省の関係者はいませんか?」
「ああ・・そうですね。ちょっと確認を取ってきますんで、横になってお休みください」

看護師は介助しながら再び都築を横にすると、サンダルの音をパタパタ鳴らして出て行った。
静かな病室だった。時折廊下での話し声や遠くで車のクラクションが鳴る程度だ。まどろみが徐々に抜け始めたが、都築は思考がクリアになっていくことが怖かった。あの場で、何かとてつもないエネルギーが放出された。防衛省が、仲間達が、何より目の前にいたピンキーのメンバーが無事であろうか。自分の状況から鑑みるに、無傷である姿が想像できないからだ。扉がノックされると、先程とは違う看護師が入ってきた。婦長だろうか、人の良さそうなベテランの雰囲気があった。「ああ良かった」とこの看護師も言った。

「都築さん、どこか痛みますか?まあそう言われても痛いところだらけですよね」

軽く微笑んで見せたが、それが表面上の笑顔に見えた。何か、明るく努めているような。

「関係者はいませんか?それと今の状況確認をしたいのですが」
「先生が後程もろもろ説明に来ますので今はちょっと、後ほどね」

そう答えると、腕に刺さった点滴の針を確認し足早に出て行った。何か妙だった。静かすぎると思ったのだ。自分がここに運び込まれるのであれば、防衛省とその近辺は、何か大きくダメージを負ったに違いない。しかし、もしそうであればもっと大勢の負傷者でごった返しているはずなのだ。外の風景もそうだ。市ヶ谷と西新宿とではそこまで距離が離れているわけではない。大規模の有事があったのならば、煙までとは言わずとも、緊急車両が行き交うざわつきくらいあるだろう。ところが窓の外の風景は穏やかな夕景だ。都築は再び身体を起こすと、窓外へ目をやった。どうも目がおかしいらしく、風景がチラついて見えた。眉間を抑え、目を凝らして外を見た。眼下を歩くサラリーマンの姿が、一瞬ではあるがジジッとブレた。まるでデジタル画面のバグのように。


(つづく)

文/平子祐希

■平子祐希 プロフィール
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。
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