A24発メランコリックスリラー『テレビの中に入りたい』主人公たちや謎めく深夜番組を捉えた場面写真
第74回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品されたA24製作の映画『テレビの中に入りたい』(9月26日公開)から場面写真が到着した。
本作は90年代のアメリカ郊外を舞台に、自分のアイデンティティにもがく若者たちの“自分探し”を描いたメランコリック・スリラー。郊外での日々をただやり過ごしているティーンエージャーのオーウェン(ジャスティス・スミス)にとって、謎めいた深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。同じくこの番組に夢中になっていたマディ(ジャック・ヘヴン)とともに、2人は次第に番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく。
こだわりが目一杯詰まった卓越したセンスのビジュアル、考察や解釈の余地を残したミステリアスなストーリーが渾然一体となったこの作品は、全米で2024年5月3日、わずか4館での限定公開から始まると瞬く間に評判を呼び、5月17日には上映館が469に急拡大。公開から1周年記念で新たなグッズが発売されるなど、続々と“中毒者”を生みだし続けている。
解禁された場面写真では、オーウェンとマディが真っ暗な部屋の中でソファーに座り、毎週土曜日22時半から放送される謎めいた深夜番組「ピンク・オペーク」を食い入るように見る姿が画面から放たれる煌々としたピンクの光のなか印象的に写しだされ、まさに『テレビの中に入りたい』という本作のタイトルを連想させる印象的な1枚や、カラフルでビビットな子ども用バルーンの中で1人なにかを見つけたような真剣な眼差しで佇むオーウェンの繊細な少年時代の姿、またテレビ番組「ピンク・オペーク」をきっかけに出会ったオーウェンと彼を見つめるマディの、閉塞感漂うカットも印象的だ。
さらに物語のキーとなる「ピンク・オペーク」の場面カットも初解禁。グラウンドに写しだされるピンクに彩られた印象的なタイトルロゴや、まるで絵画のような美しい色彩で覆われた空の下、川辺で座禅を組み宙に浮いているように見える女性の2ショット、番組に登場する白い洋服を身にまとい森の中で怪しげに踊りこちらを見つめる何者かの奇妙なシーンや、カラーチョコをふりかけられたおぞましいアイスクリームマンの姿など、子どもの頃に見たらまさにトラウマとなりそうなショッキングなシーンがちりばめられ、オーウェンとマディを魅了する「ピンク・オペーク」のさらなる謎が気になる数々のシーンが写されている。
1990年代のアメリカを舞台に、誰もが少なからず持つ普遍的なジレンマをノスタルジックかつスリリングに描く本作。独創的な映像と物語は日本の映画ファンも熱狂させるに違いない。
文/スズキヒロシ