幻想的な美しさ!広瀬すず主演映画『遠い山なみの光』本予告&本ポスター

幻想的な美しさ!広瀬すず主演映画『遠い山なみの光』本予告&本ポスター

1989年にイギリス最高の文学賞であるブッカー賞、2017年にノーベル文学賞を受賞した小説家カズオ・イシグロの鮮烈な長編デビュー作を、『ある男』(22)で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞含む最多8部門を受賞した石川慶監督が映画化した『遠い山なみの光』が9月5日(金)に公開される。このたびメインビジュアルと本予告編が解禁された。

本作は、1950年代長崎と 1980年代のイギリスを生きる3人の女たちの知られざる真実を描く感動のヒューマンミステリー。日本人の母とイギリス人の父を持つニキ。大学を中退して作家を目指す彼女は、長崎で戦争を経験したあと、イギリスへ渡った母、悦子の半生を綴りたいと考える。娘に乞われ、口を閉ざしてきた過去の記憶を語り始める悦子。それは30年前、戦後間もない長崎で暮らしていた頃に出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。だが、ニキは次第に母が語る物語に違和感を感じ始める。

長崎時代の悦子を演じるのは広瀬すず、佐知子に二階堂ふみ、イギリス時代の悦子に吉田羊、ニキにはオーディションで選ばれたカミラ・アイコ、さらに悦子の夫に松下洸平、その父親に三浦友和と、日英映画界の至宝が揃った。そのほか、日本パートには柴田理恵、渡辺大知、鈴木碧桜らが出演。豪華実力派キャストが集結し、物語を彩る。

解禁となったのは、長崎の山なみを背に、凛とした表情でこちらを見ている悦子とミステリアスな佇まいの佐知子、そして30年後にイギリスで暮らしている悦子が印象的なメインビジュアル。あわせて解禁された本予告編は、本作の原作者イシグロの一節から始まる。

1980年代、イギリスに暮らす悦子は、娘のニキ(アイコ)に「ここへ来る前の話を聞かせて、長崎のこと」と、問いかけられる。目の前の娘を見つめながら過去へ思いを馳せる悦子の顔が、30年前、戦後復興期の長崎で暮らしていた頃の自分の記憶と重なってゆく。

「あんときは、1人で立ってられんかったんです」と戦争直後の自分を振り返る悦子。そして佐知子は「あの辺は原爆でなにもかもふっとんじゃったから、しばらくは本当に大変だった」と、凛とした強さで語る。悦子のお腹の子を心配し、「君があの日、被爆せんやったとは、本当によかった」と愛情を見せる夫、二郎(松下)のセリフが続き、最後に二郎の父、緒方(三浦)から「二郎はあんたには優しかね?」とあたたかい言葉を投げかけられる。苦労もありながら、幸せな思い出として蘇る長崎の記憶を語る悦子は遠い目をして「素敵な思い出よ」とつぶやく。しかし、そんな母に対してニキはひとこと、「嘘」と言い放つ。

そこから画面は一転、様相を変える。「私がついた嘘」という印象的な文字と共に、人が変わったかのような鋭い表情の悦子。「私、佐知子さんに言っとらんことのあると」という言葉が重なる。「きみにも、もう少し母親らしく振舞ってもらいたかよ」と言葉をぶつける二郎に対し、悦子は「母親らしく振舞うってなに?」と静かに問いかけ、自由奔放に自らの人生を謳歌する佐知子を、意味ありげな視線で見つめる。それぞれの登場人物の感情が交錯し、次第に“あの夏に隠されたせつなすぎる真実”へと向かっていく。最後に悦子がつぶやく「大丈夫ね、希望があるとやもん」。すべてを包み込むその一言に込められた強い想いとは?ニキが、母の語る物語の思いがけない真実にたどり着いた時、そこで明かされる激動の人生に心揺さぶられる。

戦後80年となる 2025年の夏にスクリーンに描かれるこの物語は、終戦間もない長崎という、まだ過去にしきれない“傷跡”と、未来を夢見る圧倒的な“生”のパワーが渦巻く時代を生き抜いた女性たちの姿を鮮明に描きだす。先の見えない時代を生きる私たちに前へ進む勇気をくれる、感動のヒューマンミステリーをぜひ映画館でご覧いただきたい。


文/山崎伸子

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