『トップガン マーヴェリック』コンビが再タッグ!監督&プロデューサーが明かす映画『F1(R)/エフワン』でこだわった“リアリティ”
ブラッド・ピット主演最新作映画『F1(R)/エフワン』が公開中だ。『トップガン マーヴェリック』(22)の監督&プロデューサーコンビによる本作は、モータースポーツの最高峰F1を舞台にしたエンタテイメント超大作。F1の全面協力のもの、世界各地のサーキットで実際のフォーミュラカーで撮影を行うなど迫真の映像が盛り込まれている。『マーヴェリック』に続いて“リアリティ”を突き詰めた本作の裏側を、ジョセフ・コシンスキー監督とプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーに聞いた。
かつて“天才”と呼ばれながらF1から身を引いて、フリーランスのレーサーとして各地を転々としていたソニー(ブラッド・ピット)は、かつてのチームメイトのチームを立て直すためF1への復帰を決意。しかし常識破りなソニーの走りに、ルーキードライバーのジョシュア(ダムソン・イドリス)やチームメイトたちは困惑を隠せない。最強のライバルたちが勝利を重ねていくなかで、ソニーの型破りな作戦によって低迷にあえぐチームは次第に上位に食いこみ始めるが…。
「F1は、真のエリートたちの世界」(コシンスキー)
本作の企画の発端は、コシンスキー監督がNetflixのドキュメンタリーシリーズ「Formula 1: 栄光のグランプリ」を目にしたことだった。チームを支える多くのクルーの姿に魅了されたコシンスキー監督は、F1を題材にした作品の構想を固めていった。「F1は各チームが自分たちのマシンをイチから作っています。自分たちで設計し、パーツ類も自ら製造するという徹底したクラフトマンシップに感動しました。ドライバーの背後には、設計から製造、組み立てまで何千人ものスタッフが支えているんです」。参加するチームが契約できるドライバーは2人のみ。10チームが1年を通して競い合うF1は、20人のトップドライバーが世界最速の座を競い合う熾烈なスポーツなのだ。コシンスキー監督は現場でその厳しさを目の当たりにしたという。「ドライバーは反射神経や判断力はもちろん、日々進化を続けるマシンを操る技術と知識も求められます。真のエリートたちの世界なのです」。
各地のレースを転々としているソニーは、高度なテクニックを持ちながら、反則ギリギリの危険な走りで物議をかもす破天荒なドライバー。「脚本のアーロン・クルーガーやブラッドと密にやり取りしながらキャラクターを作っていきました。経験豊富なブラッドは抜群のセンスの持ち主なので、ソニーを魅力的なキャラクターにしてくれました」とコシンスキー監督。そのキャラクターには製作に協力したF1ドライバー、ルイス・ハミルトンのエピソードも盛り込まれた。「ソニーがバルコニーで、なぜ自分はレースをするのかを語るシーンがありますが、そのセリフにはルイスが聞かせてくれた話が反映されています」。ハミルトンは史上最高の7度のドライバーズチャンピオンに輝いた天才ドライバー。ソニーには彼の魂が宿されているのだ。
『トップガン マーヴェリック』では俳優を実際に戦闘機に乗せたコシンスキー監督。本作の撮影ではピットとダムソン・イドリスが、F2マシンを改造したF1カーを実際に運転している。F1より一つ下のクラスとはいえ、F2も最高時速330kmを誇るモンスターマシン。2人はプロの指導のもと、厳しい訓練を経て撮影に臨んだ。「2人とも優秀なドライバーで、身体能力や反応、高いバランス感覚の持ち主です。それでもレースの撮影中にはクルマがスピンするなど、ヒヤリとしたこともありました。車体が大きく揺れて石や草が舞い上がる緊迫感あふれるその映像は、映画に使用しています」。
劇中ではイタリアや日本、アブダビなど世界各地のサーキットでの迫真のレースが描かれている。コシンスキー監督が特に気に入っているのはラスベガスGPだという。「このレースはソニーの視点を意識した主観的な構成になっていて、なにが起きるかわからない緊張感があるんです。撮影も大変でしたが、最も気に入っています。どのレースもそれぞれ視点や見どころが違っているので、撮っていてすごく楽しかったですね」と振り返る。
「音こそF1カーの感情の源であり、それを正確に捉えることも大切」(コシンスキー)
文明崩壊後の世界を視覚効果で描いた『オブリビオン』(13)や、機載カメラを開発した『トップガン マーヴェリック』など新たな映像技術を積極的に取り入れてきたコシンスキー監督。本作には『マーヴェリック』のカメラを進化させた自由にアングルを変更できる車載カメラが使われた。物語を伝えるためのテクノロジーは不可欠だという。「空中に浮かぶ家を実感してもらうため『オブリビオン』では新たなスクリーンプロセスを開発し、『トロン:レガシー』では照明として利用できる光るスーツを設計しました。『マーヴェリック』では俳優たちのリアルな演技を捉えるため、コックピット用カメラシステムが必要でした。どれも物語や世界観、感情を支えるために開発したものです。今回も同じで、観客に見たことのないレース体験を届けるためのテクノロジーが必要でした」と語るコシンスキー監督。現在も長年組んできた撮影監督クラウディオ・ミランダと共にソニーで新たなカメラシステムを開発中だという。「今回使ったシステムをさらに小型で高性能化したもので、これまでにない視点の映像体験ができるでしょう。いまジェリー・ブラッカイマーと取り組んでいるUAP(未確認空中現象)をテーマにした新作に使う予定です」。
ドライバーの主観映像を取り入れた迫真のレース映像に圧倒される本作だが、サウンドにも注目してほしいとコシンスキー監督は力説する。「本物の音に近づけるため、世界中のサーキットを回って実際のF1カーの音を録音しました。それぞれのマシンには個性があり、出てくる音も違います。音こそF1カーの感情の源であり、それを正確に捉えることも大切でした。なぜならドライバーたちは誰かが後ろにいるのか、どれだけ近いかなど、音を頼りに周囲の状況を判断してるのですから。音作りのプロセスにはルイス・ハミルトンにも深く関わってもらい、音の面でもF1カーに乗っているような臨場感を再現しました」。