アラン・リックマンとの思い出エピソードも!映画「ハリー・ポッター」のグラフィック担当、ミナリマに制作裏話を聞いてきた。
「J・K・ローリングは制作エリアに何度か足を運んでくれた」(リマ)
——デザイナーとしてカリスマ的な存在のお2人ですが、影響を受けたデザイナーやアーティストを教えてください。
リマ「『ハリー・ポッター』シリーズにおいては、やっぱり美術監督のスチュアート・クレイグとセット・デコレーターのステファニー・マクミランの2人は、影響を受けた方という点では外せません」
ミナ「クレイグは私たちにとってダンブルドア的存在です。常に周りの人の意見を聞く形でコラボレーションしてくれます。こちらを巻き込むような感じの言い方をしてくれる方で、その向き合い方がすてきだと思うし、デザイン面に関しては、すべてを完璧に理解して作っている印象で、とにかくすばらしい方です!」
リマ「2人が率いるチームの一員になれたことが僕たちにとっては本当にすばらしい出来事で学びも多かったです。『ハリー・ポッター』シリーズでは、ステファニーならどうするだろう?と、自問しながら作っています。亡くなってしまったのがすごく残念で、寂しいです」
——J・K・ローリングやキャストの方のインタビューでもお2人が手掛けたデザインのすばらしさに触れるコメントをたくさん拝見してきました。直接、感想などをもらう機会はあったのでしょうか?
リマ「ローリングは何度か制作エリアに足を運んでくれました。本を書く方だから、やはり世界観の近いもの、本や新聞、テキストなどに興味を持っていました。取材でもグラフィックに触れてくださることが多くて、ディテールの綿密さ、細かさを褒めてくれました。例えば、映画では本を開く予定はないけれど、僕たちとしてはその可能性も含めてデザインをしています。中身まで細かくデザインしているところに感動すると何度も言ってくれたのは印象に残っています」
——キャストともそういったやりとりはありましたか?
ミナ「ウィーズリー家の双子を演じたジェームズ・フェルプスとオリバー・フェルプスのどちらかがインタビューでグラフィックデザインの細かいディテールいついて触れていて。僕たちも演技のうえで、このくらいの努力をしなければいけないと刺激を受けたと話していたことにすごく感動しました。みんなが同じ方向を向いて『ハリー・ポッター』という物語をちゃんと伝えるために、すごく高いレベルのものを持ち寄らなければいけないと感じていることのあらわれだなと」
リマ「ヘレナ・ボナム=カーターが撮影の待ち時間にベラトリックスの衣装のまま突然オフィスに来て、『2人のグラフィックがみんな最高って言うから、見にきたの!』って。モノづくりをする方なので、一緒に作り始めて(笑)。アラン・リックマンもプレミアパーティで会った時に声をかけてくれて。『君たちが、あのイライラする最悪なデザインをするグラフィックチームだね!』って。もちろん彼らしいブリティッシュのブラックジョークなんだけど(笑)。アランはもともとグラフィックデザイナーだったから、作り手の気持ちもわかるようで、ジョークを飛ばしたあとに、ギュッとハグをしながら『君たちほどすばらしいグラフィックデザイナーはいない!』と褒めてくれました。すごくいい思い出でいまでも、鮮明に覚えています!」
取材・文/タナカシノブ