無垢なる修道女がさらされる試練と恐怖…『死霊館のシスター』や『オーメン:ザ・ファースト』など『IMMACULATE 聖なる胎動』とあわせて観たい修道院ホラー&スリラー

無垢なる修道女がさらされる試練と恐怖…『死霊館のシスター』や『オーメン:ザ・ファースト』など『IMMACULATE 聖なる胎動』とあわせて観たい修道院ホラー&スリラー

高品質で尖った映画群を世に送りだすスタジオ、NEON(ネオン)が北米配給を手掛け、全米興収トップ10に4週連続でランクイン。修道院を舞台にした狂気のオカルトホラー『IMMACULATE 聖なる胎動』がいよいよ7月18日(金)より全国公開となる。

キリスト教に仕える者たちが共同生活を送る神聖な場所でありながら、世俗から隔絶された閉鎖空間でもある修道院。映画の世界では、同所を静謐さと不気味さの絶妙なコントラストで描き、我々観客に深い心理的緊張と特別な戦慄を与えてきた。独特の儀式や慣習が登場し、「信仰」「禁忌」「純潔」「悪魔」といった宗教的モチーフが恐怖に絡んでいく。

アメリカからイタリアの修道院にやって来た修道女セシリア(『IMMACULATE 聖なる胎動』)
アメリカからイタリアの修道院にやって来た修道女セシリア(『IMMACULATE 聖なる胎動』)[c] 2024, BBP Immaculate, LLC. All rights reserved.

本稿では『IMMACULATE』の公開にちなんで、数多い“修道院もの”のホラー&スリラー映画のなかから選りすぐりの必見作を、最近の話題作からクラシックな名作まで幅広く紹介したい。

悪魔のシスター、ヴァラクのルーツに迫る『死霊館のシスター』(18)

俊才ヒットメーカー、ジェームズ・ワンが製作を務める「死霊館」ユニバースの第5作。『死霊館 エンフィールド事件』(16)に登場した悪魔のシスター、ヴァラクのルーツに迫るスピンオフな前日譚だ。

『死霊館 エンフィールド事件』に登場した悪魔のシスター、ヴァラクのルーツに迫る『死霊館のシスター』
『死霊館 エンフィールド事件』に登場した悪魔のシスター、ヴァラクのルーツに迫る『死霊館のシスター』[c]Everett Collection/AFLO

物語は1952年、ルーマニアの聖カルタ修道院で一人のシスターが自ら命を絶った事件が発端となる。この真相を調査するため、バーク神父(デミアン・ビチル)と見習い修道女アイリーン(タイッサ・ファーミガ)がバチカンから派遣。2人はやがて、決して関わってはならない最恐の元凶的存在、ヴァラクの強大で邪悪な力と対決することになる。

ルーマニアの修道院で起こったシスターの自殺事件を調査するバーク神父(『死霊館のシスター』)
ルーマニアの修道院で起こったシスターの自殺事件を調査するバーク神父(『死霊館のシスター』)[c]Everett Collection/AFLO

修道院という舞台がホラーハウスと化し、悪魔的な攻撃性が露わになるアクションホラーとしての魅力が「死霊館」ユニバースの醍醐味。本作では東欧ルーマニアの暗い歴史と共に不気味な宗教的テーマを探究しながら、恐怖と冒険が調和したパワフルなエンタテインメントを実現させた。続編『死霊館のシスター 呪いの秘密』(23)も同様にハイボルテージでコワおもしろい!

最恐の元凶的存在、ヴァラクの邪悪な力と対決することに…(『死霊館のシスター』)
最恐の元凶的存在、ヴァラクの邪悪な力と対決することに…(『死霊館のシスター』)[c]Everett Collection/AFLO

若い修道女が教会内の陰謀や権力争い、恐ろしい試みに巻き込まれる『オーメン:ザ・ファースト』(24)

ホラー映画史上に燦然と輝く1976年の名作『オーメン』の前日譚として、悪魔の子ダミアンの誕生とその背後に潜む教会の陰謀を描いたシリーズ最新作。『オーメン』のフランチャイズ映画としては、2006年の第1作のリメイク版以来となる18年ぶりの新作となった。

悪魔の子ダミアンの誕生とその背後に潜む教会の陰謀を描く『オーメン:ザ・ファースト』
悪魔の子ダミアンの誕生とその背後に潜む教会の陰謀を描く『オーメン:ザ・ファースト』[c]Everett Collection/AFLO

時代背景は反体制的な若者たちによるデモ活動など“政治の季節”が燃え上がり、教会や信仰の影響力が弱まっていた1971年。イタリア・ローマのカトリック教会内の施設に若いアメリカ人女性のマーガレット(ネル・タイガー・フリー)がやって来て、修道女としての新たな人生を始める。ところがこの修道院では陰湿な監禁やシスターの焼身&首吊り自殺など、次々と不可解な事件や厄災が勃発。マーガレットは教会内の反キリスト派による暗い陰謀や権力争い、悪魔の力を具現化しようとする恐ろしい試みに巻き込まれていく。

イタリア・ローマの教会にやって来たアメリカ人修道女マーガレットの周囲で次々と不可解な事件や厄災が勃発する(『オーメン:ザ・ファースト』)
イタリア・ローマの教会にやって来たアメリカ人修道女マーガレットの周囲で次々と不可解な事件や厄災が勃発する(『オーメン:ザ・ファースト』)[c]Everett Collection/AFLO

2024年4月5日に全米公開された本作は、ちょうど近い時期に公開された『IMMACULATE』(同年3月22日)と頻繁に比較された。キリスト教の新約聖書に記された「処女懐胎」をモチーフとする性的抑圧や暴力、悪魔憑きといった要素や、アメリカからイタリアにやって来た修道女を主人公とする基本のストーリーラインもよく似ている。共に「ナンスプロイテーション映画」と呼ばれる、修道女や女子修道院を主題としたセンセーショナルなジャンル映画の最新ヒット作として双璧の存在となったのだ。

処女懐胎がモチーフで性的抑圧や暴力、悪魔憑きを描くなど『IMMACULATE 聖なる胎動』との共通点も多い(『オーメン:ザ・ファースト』)
処女懐胎がモチーフで性的抑圧や暴力、悪魔憑きを描くなど『IMMACULATE 聖なる胎動』との共通点も多い(『オーメン:ザ・ファースト』)[c]Everett Collection/AFLO

もちろん本作は「オーメン」シリーズならではのゴシックな映像や音楽の重厚感、悪魔の数字「666」の象徴性など禍々しい魅力も横溢。『IMMACULATE』とあわせて観るにはうってつけの1本である。

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