北米で実写版『ヒックとドラゴン』がアニメ版を上回るオープニングを記録!V4を逃した『リロ&スティッチ』との意外なつながりも
先週末(6月13日から6月15日まで)の北米興収ランキングは、2010年代に3本の長編映画と複数の短編作品が製作されたドリームワークス・アニメーション屈指の人気シリーズ「ヒックとドラゴン」の実写版となる『ヒックとドラゴン』(9月5日日本公開)が初登場でNo. 1を獲得。まずは本作の成績を、過去のシリーズ作品と比較していくことにしよう。
初日から3日間の興収は8466万ドルと、2025年公開作としては第4位の好成績。北米の歴代オープニング興収ランキングでも116位に入っており、かつ本作は実写映画でありつつもドリームワークス・アニメーション製作作品。同スタジオの作品としてみれば、『シュレック3』(07)と『シュレック2』(04)に次ぐ第3位のオープニングということになり、もちろん「ヒックとドラゴン」シリーズ3作のオープニング興収を上回っている。
その「ヒックとドラゴン」シリーズの成績をざっと振り返っていくと、第1作がオープニング興収4373万ドルで、北米累計興収は2億1758万ドル、全世界興収は4億9487万ドルだった。第2作は順に4945万ドル、1億7700万ドル、6億2153万ドルで、第3作も同様に、5502万ドル、1億6094万ドル、5億3998万ドル。簡潔にまとめれば、作品評価が抜けて高かった第1作がスマッシュヒットを記録して人気を得たものの、第2作以降は初動に偏った興行に転じ、とりわけ北米では新規ファンも案外獲得できていなかったと読み解くことができる。
そう考えると今回の実写化の初動成績はかなり優秀なもの。ドリームワークスアニメの実写化は今回が初の試みではあるが、こうした名作アニメの実写化は近年ディズニーが相次いで成功させてきた方法論。公開5日目にあっさりと北米累計興収1億ドルに達しており、海外興収も好調。製作費が1億5000万ドル(意外にもアニメ第1作のほうが高額なのだが)のため損益分岐点にはまだ届かないが、最終的には回収だけるだけのポテンシャルを秘めているはずだ。
ちなみに作品評価のほうに目を向けてみると、批評集積サイト「ロッテン・トマト」における批評家からの好意的評価の割合は77%、観客からのそれは98%と、前者はすべて90%超えだったアニメ3作からは数字を落としているが、対照的に後者は上回っていることがわかる。レビューなどを見てみると、極めてオリジナルに忠実な作風のようで、それが目新しさを望む批評家の評価を下げ、ファン層を中心とした観客評価が高い要因と推察できよう。
そういえば、前週まで首位をキープしていた実写版『リロ&スティッチ』(日本公開中)のオリジナルアニメは、「ヒックとドラゴン」シリーズのディーン・デュボア監督&クリス・サンダース監督の長編デビュー作。デュボア監督は今回の実写版『ヒックとドラゴン』でもメガホンをとっており、サンダースのほうはこれまでの「リロ&スティッチ」関連作と同様スティッチ役の声を担当。縁の深い2作品の興味深い直接対決となったが、批評面では『ヒックとドラゴン』が優勢、興行面では『リロ&スティッチ』の圧勝というかたちで平和的におさまるだろう。
文/久保田 和馬