“邦画は観ない派”のアレン様『でっちあげ　～殺人教師と呼ばれた男』を忖度ナシでレビュー！「なにも言わずに映画館に行って」

2003年、福岡市の小学校で1件の体罰事件が起きた。「死に方教えたろうか」。そんなセンセーショナルな脅し文句で、教師が児童を恫喝した。週刊誌は「殺人教師」の見出しをつけ、事件を報道。教育委員会が日本で初めて教師によるいじめと認めたことにより、報道は一気に激化。教師は日本中からバッシングを浴びた。

はたして本当に体罰はあったのか。ノンフィクション作家・福田ますみによるルポタージュ「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」を、鬼才・三池崇史のメガホンにより映画化。『でっちあげ　～殺人教師と呼ばれた男』と題し、6月27日(金)より全国公開される。疑惑の教師・薮下誠一を綾野剛、体罰を告発する児童の母・氷室律子を柴咲コウ、さらに事件を報じた週刊誌記者・鳴海三千彦を亀梨和也が演じ、その迫真の演技バトルも大きな見どころとなっている。そこで、映画好きで知られるアレン様が公開に先立ち本作を鑑賞。忖度一切なし。本音満載の感想をぶちまけてくれた。

※本記事は、後半よりストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

「邦画を全然観ない私でも、129分間ずっと感情が振り回されてのめり込みました」

【写真を見る】アレン様、神々しいオーラ全開！撮影/尾藤能暢

「実は私、邦画って全然観ないんです。どれくらい観ていないかと言うと、10年は観ていないと思う」。いままさに映画の鑑賞を終えたばかりのアレン様。ホクホクした顔でまずはそう口火を切った。「そんな私が久々に邦画っていいなと思いました。実は映画を観る前、すっごいお腹が減ってたの。でも鑑賞中、一度もお腹が空いてることが気にならなかった。129分間ずっと感情が振り回されて、ひたすらのめり込んで観ていました」。

冒頭で律子の家に家庭訪問にやってくる薮下は、教師とは思えない態度[c]2007 福田ますみ/新潮社 [c]2025「でっちあげ」製作委員会

物語は、薮下が律子の自宅へ家庭訪問にやってくるところから始まる。教師とは思えぬ非礼な態度。綾野が演じる冷血モンスターっぷりに、思わず背筋が凍りつく。「私、映画は冒頭15分が勝負だと思っていて。そこが微妙だと、一気に興味をなくすのね。この映画は開始5分からもうゾクゾクするし、引き込まれる。元ネタになっている事件を一切知らずに観たから、『なにこのヤベえ教師！』って怒りから入っちゃって。あのインパクトは強烈！おかげで最後まで目が離せませんでした」。

生徒思いな小学校教諭の薮下誠一は、児童・氷室拓翔への体罰で告発される[c]2007 福田ますみ/新潮社 [c]2025「でっちあげ」製作委員会

愛する息子を守るため、律子は立ち上がり、薮下の体罰を告発。殺人教師と悲劇の母による裁判へと発展する。そこから一気に物語は加速。本当の意味での『でっちあげ　～殺人教師と呼ばれた男』は、ここから始まっていく。「私、めっちゃ踊らされたなと思いました(笑)。この教師のことなんてなにも知らないのに、母親側の言い分だけを信じて、最低の教師だと思っていたわけじゃない？それが今度は教師の視点になった途端、見え方がガラリと変わる。そしたら私の見方も一変するの。見えているものだけを鵜呑みにしてコロコロ変わる自分の心理が怖いなと思いました」。

拓翔の母親である律子は学校へ乗り込み、しかるべき対応を求める[c]2007 福田ますみ/新潮社 [c]2025「でっちあげ」製作委員会

自分は体罰なんてしていない。すべてでっちあげだと主張する薮下。「どっちを信じていいのか、最後までわからなかった！」とさすがのアレン様も大パニック。自分の無実を主張し奔走する薮下を見て、「信じたいという気持ちもあったけど、やっぱり体罰をしていたってことも十分にあり得るじゃない？」と疑心暗鬼。「薮下のことを信じきれない気持ちが少し残ったまま答えを迎えたって感じ」とジェットコースターのような展開に最後まで翻弄され続けた。そのうえで、得た教訓は一つだ。「表面上の情報に踊らされていちゃダメ。真実を見抜く力を試される映画でした」。