来日した『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』イ・オニ監督に直撃!miss Aの「Bad Girl Good Girl」を使用した経緯を語る

来日した『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』イ・オニ監督に直撃!miss Aの「Bad Girl Good Girl」を使用した経緯を語る

いよいよ6月13日(金)に公開を迎える『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』。本作より、キム・ゴウン演じる主人公のファッション、ラストシーンを飾るmiss Aの「Bad Girl Good Girl」について説明する先日来日したイ・オニ監督のコメントが到着した。

【写真を見る】赤のスクーターに乗って颯爽と現れるジェヒ
【写真を見る】赤のスクーターに乗って颯爽と現れるジェヒ[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

『破墓/パミョ』(24)のゴウン、「Pachinko パチンコ」の新鋭ノ・サンヒョンが共演する本作。他人の目を気にせず自由奔放に生きるジェヒ(ゴウン)と、ゲイであることを隠し孤独に生きるフンス(サンヒョン)が出会い、同居したことから始まる“自分らしい生き方”を見つける物語が描かれる。

色彩が演出の大きなポイントに
色彩が演出の大きなポイントに[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

ジェヒの自由奔放で恋愛に猪突猛進な姿は時に世間の誤解をよぶ。それを危惧したフンスが「恋愛は赤い服みたいなもんだ、一度着ただけで“赤い服の女”と呼ばれ続ける」と語るように、“赤”は強烈なインパクトを残す色である。ポスターにもなっているゴウン演じるジェヒの真っ白なウエディングドレス姿に対しての“赤いコンバース”がジェヒらしさを象徴するように、劇中では、この赤の小物が印象的に登場する。

ゲイであることを知られるのを恐れ、目立たないよう、孤独に生きていたフンスの前に颯爽と現れたのは、動きだしたバスを強引に止め、時間ギリギリにも関わらず堂々と乗り込んでくるジェヒ。バス停まで彼女が乗ってくるのは赤のスクーターだ。そして、冒頭のフンスのセリフを聞いたジェヒが試着室から出てくる時に身につけているのは、こちらも赤のミニスカート。彼女“らしさ”を表現する時には赤色の小物が差し込まれている。

「赤というのは“代わりのきかない色”でもあります」と話すオニ監督。「人目につく、際立つものとしてジェヒを表現できる色はないのかと、“色”を探していたんですね。その結果、“赤”というのがジェヒのカラーになりました。言葉で伝えるよりも映像でパッと見た時にそのキャラクターがスッと入ってくるような表現を模索しましたね」と語っている。

意図していないところで肌が見える衣装が選ばれていた
意図していないところで肌が見える衣装が選ばれていた[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

そんなジェヒが社会人になり、周りに馴染もう、そのために妥協していこうとするなかで、“ジェヒの色”が消えていき、そしてあることをきっかけにそれを取り戻す。一方フンスは、学校ではグレートーンのファッションだが、自分を解放できるクラブに行くと違う色味のファッションに身を包む。本作においてこうした“色彩”は演出の大きなポイントとなっている。

シャネルのグローバルアンバサダーを務めるなど、ファッショニスタとしても知られるゴウンはジェヒを表現する際、「意図していないところで肌が見える衣装になるようにしました」と語っており、色彩に加え、ジェヒの性格のディテールをビジュアル面で表現。本作を鑑賞する際は、こうしたセリフでは語られない細かい心情やキャラクター性がファッションや色彩に表れているところにも注目してほしい。

ジェヒの自由奔放で恋愛に猪突猛進な姿は時に世間の誤解をよぶ
ジェヒの自由奔放で恋愛に猪突猛進な姿は時に世間の誤解をよぶ[c] 2024 PLUS M ENTERTAINMENT AND SHOWBOX CORP. ALL RIGHTS RESERVED.

試写会や先行上映で「感動しすぎて涙ボロボロ」、「思い出すだけで泣ける」、「またすぐに見たくなる!」、さらにトレンディエンジェル斎藤司氏も10回以上見直したと語る圧巻のフィナーレシーンで登場するのが、K-POPの大ヒット曲として日本でも知られるmiss Aの「Bad Girl Good Girl」だ。

同居生活を送っていた青春時代のジェヒとフンスは、部屋でパックをしながらこの曲を聞いていた。社会に出て人生に葛藤し、それでも自分らしさを貫き通した2人の人生の晴れの舞台で、再びこの曲が印象的な役割を果たす。物語にも深く関係する重要な楽曲となっている。

2010年7月にアルバム「Bad but Good」でデビューした4人組ガールズグループmiss A。タイトル曲としてリリースされたこの曲は、発売と同時にヒットチャートを独占し、2010年の年間チャート1位を記録。miss Aの代表曲とも言えるだろう。

「私みたいな女は初めてみたいだけど なぜ決めつけるの?もしかして私が怖い? 外見はバッドガール 中身はグッドガール うわべだけしか知らないくせに」といった歌詞は、劇中でジェヒがずっと抱えてきた心情に見事に重なる。

この楽曲を選んだ理由についてオニ監督は、「もともと原作では違う曲が使われているんですけれども、この映画の背景になっている時期にあった、この映画に合った新しい曲を見つけたいなと思っていました。プロデューサーからこの曲を提案されて、聞いた瞬間、これだ!と決めた。この曲を変えるということはいっさい考えたことがなかったです」と歌詞と映画の強い因果関係を明かす。このシーンについてはゴウンとサンヒョンも1番好きなシーンと語っており、「このシーンのために走ってきた」と強い想いを持っている。


価値観の押し付け、ルッキズム、ハラスメント…。そうした“過去の価値観”からの脱却を女性目線で歌う楽曲と、ジェヒとフンスが紡いできた13年の物語がピッタリと重なりあい、最高潮にエモーショナルなフィナーレシーンも必見の『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』。ぜひ大スクリーンでその感動を噛みしめてほしい。

文/平尾嘉浩

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