「ジョン・ウィック」スピンオフは成功か否か…『バレリーナ:The World of John Wick』のオープニング興収&評価を分析!

「ジョン・ウィック」スピンオフは成功か否か…『バレリーナ:The World of John Wick』のオープニング興収&評価を分析!

先週末(6月6日から8日)の北米興収ランキングは、引き続きディズニーの実写版『リロ&スティッチ』(日本公開中)が首位をキープ。週末3日間の興収は3236万ドルで、オープニング週末から半減以上下落していた前週末からさらに半減ということになるが、それでも累計興収は週末時点で3億3500万ドルを突破。次週末に入る前には史上72本目の興収3億5000万ドル到達作品となる見込みだ。

【写真を見る】「ジョン・ウィック」ワールドがさらに拡大!アナ・デ・アルマスが復讐に燃える暗殺者に
【写真を見る】「ジョン・ウィック」ワールドがさらに拡大!アナ・デ・アルマスが復讐に燃える暗殺者に[c]Everett Collection/AFLO

そんな『リロ&スティッチ』に800万ドルほど迫る週末3日間興収2450万ドルで2位に初登場を果たしたのは、キアヌ・リーヴス主演の人気シリーズ「ジョン・ウィック」のスピンオフで、アナ・デ・アルマスが主演を務めた『バレリーナ:The World of John Wick』(8月22日日本公開)。同作の成否について、数字面でチェックしていこう。

そもそも「ジョン・ウィック」シリーズは、数多あるシリーズ映画のなかでも稀有な推移を見せてきたシリーズだ。2014年に公開された第1作は、制作費2000万ドルでオープニング興収が1441万ドル。北米最終興収は4303万ドルで全世界興収8608万ドルと、まずまず成功した作品だった。それが2017年の第2作で制作費が4000万ドル、オープニング興収3043万ドル、北米興収9202万ドル、全世界興収1億7434万ドルとすべてが倍増。

2022年後半から撮影が行われ、ようやく公開。シリーズに欠かせないランス・レディックの出演も
2022年後半から撮影が行われ、ようやく公開。シリーズに欠かせないランス・レディックの出演も[c]Everett Collection/AFLO

2019年の第3作でも制作費7500万ドル、オープニング興収5681万ドル、北米興収1億7101万ドル、全世界興収3億2834万ドルに跳ね上がり、2023年の第4作で制作費が1億ドルの大台に到達。オープニング興収7381万ドルとシリーズ新記録を樹立し、北米興収1億8713万ドル、全世界4億4000万ドルと、作品を重ねるごとに作品の世界観が拡大し、かつすべてにおいて完全な右肩上がりの成績を達成してきたのである。

こう羅列してわかるように、4作ともオープニング興収は制作費に対して7割強。北米興収ではおよそ2倍(第4作だけ届いていないが)、全世界興収では4倍以上をマークしていることがわかる。今回の『バレリーナ』のようなスピンオフを含め、今後もシリーズの存続が決定していることから考えるに、つまりこれが「ジョン・ウィック」シリーズの成否を決める基準ラインのようなものと判断できよう。

伝説の殺し屋ジョン・ウィック役のキアヌ・リーヴスも出演!
伝説の殺し屋ジョン・ウィック役のキアヌ・リーヴスも出演![c]Everett Collection/AFLO

とはいえ『バレリーナ』は、キアヌの出演はあるものの、これまでのシリーズを手掛けてきたチャド・スタエルスキ監督からレン・ワイズマン監督にバトンタッチされたスピンオフ作品。事前に目標とされていたオープニング興収は3500万ドルだったと報じられており、制作費が9000万ドルであることを踏まえれば38%。ざっと“基準ライン”の半分ほどとかなり控えめに見込まれていたようだ。

結果的には先述の通り2450万ドルであり、制作費対比で見ればわずか27%。北米メディア「Screen Rant」の記事を参照すると、期待を下回るスタートとなった原因は複数挙げられる。アクションシーンの見直しと追加撮影のため、当初から1年の公開延期になったこと。その反面、最初の予告映像が公開されたのが昨年9月と早すぎたこと。ワイズマン監督のこれまでの作品が失敗続きで、観客の期待値が低かったこと。“過去”を遡って描くことを否定してきた「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフとして、第3作と第4作の狭間という過去の物語を描いてしまったことなど。

オープニング興収は2450万ドルだが、観客からは高評価を獲得
オープニング興収は2450万ドルだが、観客からは高評価を獲得[c]Everett Collection/AFLO

それでもさすがは安定と信頼の「ジョン・ウィック」シリーズの仲間。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価は76%、観客からのそれは93%と比較的高い評価を得ている。過去のシリーズ4作は、批評家からの評価が順に86%、89%、89%、94%。観客からの評価が順に82%、85%、86%、93%と、こちらも見事に右肩上がりとなっている。

批評家からの評価はメインシリーズを下回ったものの、観客からの評価で第4作と同等のスコアを得たならば、スピンオフとして立派に及第点を叩きだしたといえるのではないだろうか。



文/久保田 和馬

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