「日本アニメに新たな風格をもたらした」仏アヌシー映画祭で快挙達成の『ChaO』!授賞式後のサイン攻めまで、現地の熱狂を詳細レポート

「日本アニメに新たな風格をもたらした」仏アヌシー映画祭で快挙達成の『ChaO』!授賞式後のサイン攻めまで、現地の熱狂を詳細レポート

「胸がいっぱいで、言葉が出てこない」

「今回アヌシーで初めて観客の皆さんと映画を観て、『ここ笑うんだ!』というようなことや、お客さんの熱量が上がりはじめて一体感が生まれる瞬間を目の当たりにすることができました。このような感情がぶつかりあう感覚を味わうのは初めてだったので、あらためて『お客さんと一緒に劇場で映画を観るのって楽しいな』と感じました」。

笑いもスペクタクルもラブストーリーも、あらゆる要素が詰まったエンタメ感の高い仕上がりに
笑いもスペクタクルもラブストーリーも、あらゆる要素が詰まったエンタメ感の高い仕上がりに[c]2025「ChaO」製作委員会

そう語る青木監督は、1980年代にアニメーターとしてのキャリアをスタートさせ、テレビアニメから劇場アニメまで、数多くの人気作に作画監督や原画スタッフとして参加。『ChaO』が待望の初長編監督作品となった。これまで培ってきた経験やノウハウを注ぎ込んだ渾身作が、こうして海外の観客から熱烈に歓迎され、長編コンペティション部門審査員賞という栄誉まで勝ち取ったことに、格別の想いがあるだろう。

世界最速上映を終えた青木監督は、会場の外で大勢の観客に囲まれて一人一人と丁寧に言葉を交わしながら、サインを書いたり握手をするなどファンサービスに応えていた。そのなかでも青木監督が印象的だったと振り返るのは、ほかの観客よりもお年を召した高齢の女性からサインを求められたことだという。「彼女は私の席の近くで目を輝かせながら鑑賞されていました。何度もアイコンタクトを送ってこられていて、『ChaO』が幅広い世代の方に観てもらえる作品なんだと実感できて感無量でした」。

「世界に発信できるアニメを作る」という目標を叶えた
「世界に発信できるアニメを作る」という目標を叶えた[c]2025「ChaO」製作委員会

また、サインを求めるファンのなかには感極まって泣いてしまう若い男性の姿も。「彼からは、『アニメ業界を目指しているが自分の将来が不安だ』という相談を受けました」と明かす青木監督。「そこで私は『好きなことを日々がんばっていれば必ず報われる。誰にでもできることでもないから、毎日を大切に』という言葉と、10年後や15年後を見据えたアドバイスをしました。いつか一緒に仕事ができるかもしれませんね」と、穏やかな笑みを浮かべていた。

アワードセレモニーのあとに行われたクロージングパーティでも、本作に魅了された映画祭関係者が青木監督のもとに殺到し、急遽サイン会が行われることに。アヌシー市のフランソワ・アストルグ市長もその場に駆けつけ青木監督にサインを求めると、青木監督はイラスト入りのサインを進呈。市長は田中プロデューサーとがっちりと握手を交わし、絶賛と労いの言葉をかけていた。


クロージングパーティでも急遽サイン会が開かれる人気っぷり!
クロージングパーティでも急遽サイン会が開かれる人気っぷり![c]2025「ChaO」製作委員会

セレモニーの壇上では「ここにこうして立っていることが信じられません」と感慨深げに語っていた青木監督。あらためて受賞の喜びを訊いてみると「非常にうれしいです。胸がいっぱいで、言葉が出てこないです」と、まだ夢見心地の様子。そして「私が伝えたいすべては『ChaO』に映っていますので、ぜひ映画を観て感じてください。よろしくおねがいします」と、力強く語ってくれた。

日本公開までおよそ2か月。いち早く世界を魅了し、高い評価を得た『ChaO』。ダイナミックで独創的なアニメーション表現と、ユーモア満点のキャラクターが織りなす心ときめかずにいられない恋模様。そしてなにより、この上ない多幸感に満ちた唯一無二の世界観を、ぜひとも劇場のスクリーンでたっぷりと味わってほしい。

文/久保田 和馬

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