「独自の時間で進行し、ひとつの世界を生みだすのは、映画の本質的魅力」ジョン・クローリー監督が明かす『We Live in Time この時を生きて』の制作秘話

「独自の時間で進行し、ひとつの世界を生みだすのは、映画の本質的魅力」ジョン・クローリー監督が明かす『We Live in Time この時を生きて』の制作秘話

「2人だった家族が3人になるという意味で、作品全体を凝縮するシーンにしたかった」

子どもを授かり、喜びを爆発させる2人
子どもを授かり、喜びを爆発させる2人[c] 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

主人公の2人、アルムートとトビアスにはいくつものドラマチックな運命の瞬間が用意される。監督として最も力が入ったシーンの演出は、アルムートの出産シーンだったと明かす。「あの出産シーンこそ、私がこの映画を撮りたくなったポイントのひとつでした。アルムートが出産の準備をして、その瞬間を待ち侘びているにもかかわらず、一気に産気づくのは不条理でありながら、映画にドラマチックな緊張感を与えます。さらにあの出産シーンには笑いと涙など多くのトーンが混在します。2人だった家族が3人になるという意味で、作品全体を凝縮するシーンにもしたかった。すべてをうまく機能させるうえで、本当にたくさんの苦労がありました。アルムート役のフローレンスには出産経験がなく、トビアス役のアンドリューも出産に立ち会った経験はありません。200人以上の赤ちゃんを取り上げてきた助産師の専門家から多くのことを学んでもらいました。撮影では生後11日の新生児に参加してもらったので、完璧なセットを作り、カメラマンと綿密な経過を練って、約15分くらいの長回しで撮ることになりました。それを1日に8回行ったので、フローレンスは疲れ果てたわけですが、本物の赤ちゃんを前にしたことで、疲労感や感情の起伏など、すべてがリアルに表現できたと思います。そこで小さな奇跡も起きました。撮影しながら赤ちゃんが眠りに落ちたのです。2人の親と1人の子どもが一緒に全力を出し切った光景がカメラに収められました。フローレンスとアンドリューは『ユーモアも失わないように』という私の難しい注文にも応えてくれて、あの出産シーンは2日で撮ったのですが、特別な時間になりました」。映画を観れば、驚くべきシチュエーションでの出産シーンは、たしかに本作の大きな見せ場となっている。

子どもの誕生を心待ちにする2人
子どもの誕生を心待ちにする2人[c] 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

そのほかにも、アルムートとトビアスが出会って間もないころのラブシーンについて「お互いの手を離せないほど、ある種の恍惚の情を出したかった」と、クローリー監督は話す。また、アルムートの病気が発覚した際は「2人の親密さが、また違ったレベルに達し、肉体のエネルギーを感じさせようとした」と、関係性が時間と共に変化し、熟成していくことを、演出で表現したことを打ち明ける。


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